『煉獄女子』(室井まさね)霧恵のいるところに必ず惨劇は起こる学園サスペンスホラー…今後はスプラッター展開か?

2018.04.23

『狂鳴街』/神谷信二・芦谷あばよ

 室井まさね氏の新作『煉獄女子』第2巻がリリースされた。

 室井まさねといえば、『屍囚獄』で2000年以降のB級スプラッター映画でよく観られる徹底的なゴアと切り株描写で血みどろホラーマンガを描き、その手のファンから喝采が送られた漫画家だ。

 『屍囚獄』は閉鎖的な農村のいわゆる“奇習”を物語の背景にしている。無差別レイプや、理不尽な惨殺描写、掟破りのダルマ描写など、目を覆いたくなるシーンの連続であった。オチも救いがなく、エンドレスな悲劇の終演にまた、B級ホラーを感じさせた。断っておくが、分かりやすい表現のためにB級という言葉を使うのであり、『屍囚獄』の完成度は非常に高かったのだ。

 さて、そんな室井まさねの『煉獄女子』だが、『屍囚獄』から引き継いだ血みどろさを感じさせるが、いまのところゴアな切り株描写は身を潜めている。というのも『屍囚獄』がスプラッターパニックであったならば、『煉獄女子』は学園サスペンスだからである。

 『煉獄女子』は謎の美女・瀬尾霧恵を中心に起こる(起こっているように現時点では見える)凄惨な殺人事件を背景に物語は進む。そこに、青春にありがちなイジメ・淡い恋心・友情と表裏一体の嫉妬・家庭の不和……など誰もが一度は経験しただろう身近な問題が存分に盛り込まれていく。

 『屍囚獄』でもあったが、『煉獄女子』はミステリーの側面も色濃く押し出されている。そのひとつがラテン語のメッセージである。殺人現場に必ず残されたラテン語のメッセージが、犯人のどんな意図を示しているのか。これがどう物語と絡んでくるのか。『煉獄女子』の物語展開で非常に重要な要素となっていることはまちがいないだろう。

 しかし、『煉獄女子』もいつゴア・スプラッター化するか分からない。というのも、単行本のカバー下イラストがなかなか狂気だからである。特に第2巻の裸で血まみれの瀬尾霧恵が、カッターナイフを持っている姿はかなりのサイコパスである。

 世界観と描かれる舞台の関係上、『煉獄女子』も『屍囚獄』と同じく話を長引かせることなく、テンポよく結末を迎えると思われる。第3巻あたりが物語の折り返し地点となるかもしれない。次巻でどこまで謎の部分が明かされるか。次の犠牲者は誰なのか。楽しみに待とう。
(文=Leoneko)

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煉獄女子 (2)
掲載誌/レーベル:バンブーコミックス
著者:室井まさね
出版社:竹書房

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