『狂鳴街』女だけをゾンビ化させる謎の昆虫とは!?ウォーキング・デッドのようなヒューマンドラマ・ゾンビパニック登場!!

2018.04.16

『狂鳴街』/神谷信二・芦谷あばよ

 ゾンビをモチーフにしたコンテンツは、常に一定の層に支持され、様々な形でメディア化されている。

 最近でいうと韓国映画の『新感染 ファイナル・エクスプレス』が記憶に新しい。マンガでいうと実写映画でも話題になった『アイアムアヒーロー』、実写ドラマ版が社会現象的人気を誇る『ウォーキング・デッド』、ガッツあふれるガチンコゾンビパニックの『異骸-THE PLAY DEAD/ALIVE-』、設定が斬新だった『アポカリプスの砦』、そしてTVアニメ化して人気となった『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』や『がっこうぐらし!』などがある。

 『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』や『がっこうぐらし!』はゾンビの父であるジョージ・A・ロメロの影響を色濃く影響されているのが、その他の作品はどちらかというと“ゾンビ=生き返った死体”ではなく、新種のクリーチャーとして描かれる。死んでからゾンビ化するのではなく、生きた人間がゾンビのような変貌を遂げるのだ(正式にはゾンビと呼称するのは誤りかもしれないが、広義の意味として)。

 そして、『王様ゲーム』や『ドクムシ』『カラダ探し』など多くのヒット・ホラーコミックを生み続けるエブリスタより新たなゾンビコミックが誕生した。『狂鳴街』である。

 『狂鳴街』の世界設定は、過去の数あるゾンビコンテンツの影響がふんだんに見え隠れするが、特徴的なのが「女性しかゾンビ化しない」ということだ(作中ではゾンビではなく、狂鳴人と表現される)。“狂鳴虫”という虫の鳴き声を聞くことによって女性が猛禽類のように狂暴化し、男性を襲う。

 襲われた男性は狂鳴人とはならない。ただ食い散らかされて肉塊となるだけだ。じゃあ女性は大丈夫なんじゃないかと思うが、狂鳴人となったら狂鳴虫と同じ音を発するようになるので、少しでも近づくことは危険なのである。

 この「女性しか狂鳴人化しない」という最大の特徴があることで、『狂鳴街』はヒューマンドラマを形成することに成功している。ある者は妹を想い、ある者は恋人を想う。まだ過去が明かされないキャラクターも多いのだが、悲しい出来事があったのは確実である。こうして誰も彼もが狂鳴人化するわけではないという縛りが、物語の表現に制限をかけるわけではなく、かえって展開とキャラクターの心情を熱くスリリングにしているのだ。

 決してグロテスクさを売りにした作品ではないので、ホラーだけは無理という人でも手に取りやすいはずだ。恋愛や家族愛、スポーツマンガに出てきそうな正義感までもが描かれる。

 とはいえジョージ・A・ロメロからモダンゾンビまで大好きだというゾンビファンでも十分に楽しめる内容だ。ゾンビコンテンツならではのお約束のシチュエーションがてんこ盛りである。いつどこで襲われるのか分からないドキドキ感、誰が生き残るのか分からない不安感、それらが第1巻からエンジン全開で楽しめる。

 第2巻がいつ頃の発売になるか、まだ分からないが待ち遠しくて仕方がない。
(文=Leoneko)

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狂鳴街 (1)
収録時間:169ページ
著者:神谷信二 芦谷あばよ
出版社:秋田書店

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