『彩子 黒・白』(本田真吾)貞子・伽椰子に続く新たなホラーアイコン誕生か!?グロテスクなホラー描写の裏に隠された悲しい物語……

2018.04.14

『『彩子』シリーズ/本田真吾

 日本のホラーアイコンといえば、鈴木光司の小説『リング』でおなじみの山村貞子だろう。清水崇監督・脚本の『呪怨』から佐伯伽椰子も、ホラーアイコンとしては貞子に次いで名高い。

 ちなみにこのふたりは『貞子vs伽椰子』として劇場版まで作られるほど、一般的にも広く知られている。

 さて、そんな貞子・伽椰子に続く3番目のホラーアイコンに名乗りをあげた作品が登場した。本田真吾氏のホラーマンガ『彩子』である。

 以下、公式の紹介文だ。

 SAiKO…それは美少女AI・彩子が恋や美容など様々な悩みに“最高”の答えをくれるアプリ。

 そのアプリが女子高生たちの間で大流行!!

  しかしその反面、そのアプリを使った子たちが次々と変死していき…!?

 要は呪いのアプリ「彩子」(さいこ)からパンデミック的に発生した謎の女子中高生の死を、主人公たちが呪いと戦いながら解明していくという物語である。

 読了して最初に感じたことが、日本のホラーの粋を集約したような作品だ、ということだ。

 スマホのアプリで人が死んでいくという点では実に現代的でありつつも、身近で何気なく起こりうるちょっと不思議な話という点では『世にも奇妙な物語』的とも言える。事件の発生から、最終的に呪いを解明していくまでの演出はどこどなく『リング』を髣髴させる。物語が佳境に入り、いよいよ呪いの正体が登場し、それと戦っていく姿は露骨すぎるグロテスクなホラー描写がゆえ、『呪怨』を髣髴させる。

 しかし、そのどれもが悪い方向に働いているわけではない。

 今回『彩子』は『彩子 黒』『彩子 白』の二冊同時リリースだ。『彩子 黒』だけであったら、よくあるホラーマンガで終わっていただろう。しかし、『彩子 白』の存在があることで、物語により深みを与えているのだ。

 『彩子 黒』は上記でも述べた通り、事件の発生から呪いの解明までを描いた物語だ。一方、『彩子 黒』はその前日譚であり、なぜこの呪いが発生したのか、詳細に描かれるのである。

 なぜ『彩子 黒』で登場する呪いの正体が露骨すぎるホラー描写なのか。呪いが発生する理由に、ある言葉が関係するのだが、どうしてその言葉なのか。『彩子 黒』で散りばめられた伏線が、全て『彩子 白』で回収される。そしてこの物語が単なるホラーマンガではなく、実に悲しい物語だったと気づかさせられるのだ。

 『リング』も『呪怨』もただ怖いだけでなく、その裏には悲しい物語が隠されている。だからこそ人々の記憶に残る作品となった。作りとして『彩子』も同じである以上、『彩子 黒』で描かれる過去のホラー映画を髣髴させる演出は全てオマージュだったと理解できる(ちなみに『彩子 白』では御茶漬海苔の『惨劇館』のオマージュも見てとれる)。それがゆえに、『彩子』は最高のホラーエンターテイメントに仕上がっているのだ。

 それにしても彩子……貞子にも伽椰子にもない、グロテスクという言葉だけでは言い表せられない最高の気持ち悪さを持っている。苦手な人が見たらトラウマ確実だろう。

 『彩子 黒』『彩子 白』の結末はリンクしている。どちらを先に読んでも楽しめるような構成だが、個人的おすすめは『彩子 黒』を読んでから『彩子 白』を読むことだ。ちなみにDMMでも『彩子 黒』が第1巻扱いで、『彩子 白』が第2巻扱いとなっている。
(文=Leoneko)

【ダウンロードはこちらから!】

彩子 黒
掲載誌/レーベル:月刊少年チャンピオン
著者:本田真吾
出版社:秋田書店

彩子 白
掲載誌/レーベル:月刊少年チャンピオン
著者:本田真吾
出版社:秋田書店

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