「マンガの人たち」の信用は地に堕ちている──青少年健全育成基本法案の本当の問題点

■守りたい「表現」は、何か

 それから、すでに5年あまりが過ぎているが、オタクの信用は地に堕ちたままだ。口には出さないまでも、事情に通じた人は腹の中で嘲笑っている。

 それも当たり前のことだろう。

 今、「表現の自由」に関心を持つオタクたちにとって、社会運動に参加する手段といえば、選挙。投票し、味方になってくれそうな候補者の事務所を手伝うことに重きが置かれている。そして、オタクであることを自称したり、マンガやアニメに理解があるような台詞を吐く政治家に向けては、無批判に賛美が繰り返される。

「私、オタクでぇす」
「うひょひょ~こちら側の人間だ~」
「応援するぅ!」
「投票しゅる!」

 いや、どこの誰ともわからない、他人の批判をしている場合ではない。

 2007年、私は永山薫との共著で『2007-2008 マンガ論争勃発』(マイクロマガジン社)を書いた。この時に、テーマにしたのは、とりあえずさまざまな立場の人の話を聞くことであった。この手法も、今となっては、極めて未熟で幼稚なものである。自身の意志や立場性を隠匿し、中立性を装いながら、話してみたところで聞けるのは、薄っぺらい表面的な話だけである。

 なぜ、自分は……この人に話を聞いてみたいと思ったのだろうか。なぜ、この人は……このような意見や思想を持つに至ったのだろうか。目の前に座った相手をおだてて、気持ちよさそうにしゃべった音を、レコーダーに記録する。それを、聞き直しながら文字起こしすれば、記事は手軽に出来上がる。それは、確かに人の言葉のように見えるかもしれないが、なにも中身はない。

 何か「表現の自由」の危機が起こるたび、幾人かのライターは「オタクの味方」を自称する政治家をネタに、ちょうちん記事を書き連ねる。マンガ家も、そのほかさまざまな関連のオタクたちはネットでリアルで「こちら側」の政治家へ、お追従を並べ立てる。そんな風景には、表現などどこにもない。

 言論/表現の自由という言葉を記すのは簡単だ。でも、自分が守るべきはなんなのだろうか。
(文=昼間たかし)

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