「マンガの人たち」の信用は地に堕ちている──青少年健全育成基本法案の本当の問題点

■焦っているのは、わずかなオタクだけ

 ただ「ホットな話題」とは記したものの、そう考えている人は、まだわずかである。「オタクの味方」を自認する前参議院議員の山田太郎は、自身の運営するニコ生でこの問題に言及。同様に「オタクの味方」であることを拠り所にしたい自民党所属の国会議員も、会議に出席し「表現の自由」を守るために発言していることを、盛んにアピールしている。

 そうした情報を得て「表現の自由」を守るための活動に熱心な一部のオタクたちが、ネットを用いて、盛んに法案の問題点の周知を図っているというのが現状である。まだ法律の内容も、実際に国会に提出されるかも曖昧であり、世間に広く危機感が生まれるには至っていない。ネットで「青健法案」というキーワードを検索すると、センセーショナルな言葉で危機感を煽る記述が多く見つかる。言葉が刺激的であればあるほどに、危機を何かに利用したいという別の隠れた意図が見えてくる。

 だから、である。長らく国家や権力による言論/表現の自由への抑圧と抗してきた出版業界の反応は、極めて冷静だ。

「この法案は、自民党の春先の恒例行事になっている」

 実情を尋ね歩く中で、ある出版業界の重鎮からは、そんな言葉を聞いた。2014年には、一度は提出されたものの時間切れで廃案。以降も、自民党内では、この季節になると青少年の健全育成の理念を記した法律案の議論を繰り返してきた。けれども14年以降は、提出にも至っていない。その大きな理由とされるのが、連立与党を組む公明党が難色を示していることにある。

「メディア規制三法の時にも、公明党には慎重論が強かった。その方針は現在も変わっていない。14年にも時間切れで廃案に至ったのは、公明党の同意を得られなかったことが大きい」

 メディア規制三法とは、00年代初頭に国会への提出が進められた「個人情報保護法案」「人権擁護法案」「青少年有害社会環境対策基本法案」の総称だ。このうち、「青少年有害社会環境対策基本法案」は「青健法案」よりも苛烈で、業界ごとに「青少年有害社会環境対策センター」設置を義務付ける構想までもが盛り込まれていた。

 だが、言論/表現の自由が抑圧されることへの危惧から、反対の声も激化。03年に「個人情報保護法」が成立したものの、残り2案は断念されるに至った。かつては、国家権力に弾圧された歴史も持つ創価学会を支持母体とする公明党では、いまだ言論/表現の自由に絡む問題では、慎重論も根強い。それが、自民党が内部で議論しても提出までは至らない枷となっているという見方もあるのだ。さらに「青健法案」の必要性を疑問視する声は、政府与党内にも強いとされる。

「すでに各都道府県は条例で、青少年の健全育成について定めている。改めて、国で法律をつくる必要性は、どこにもない」

 東京都の青少年健全育成条例も制定から、50年を超えている。その成立までの歴史を見ると、国による青少年に有害とされる本や雑誌、映画などを規制する法律案が断念される一方で、各都道府県で条例がつくられていった経緯がある。

 過去に国が断念し、都道府県が条例で補完した経緯があるにもかかわらず、いま早急に新たな法律をつくる必要性。それがあるとすれば……2020年の東京オリンピックに向けた環境浄化の一貫。それだけで「青健法案」が猛スピードで成立する可能性だけは、否定できない。

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