『ザ・リング/リバース』シリーズ最恐!サマラの呪いがパンデミック!?原作小説を現代風にアップデートした心霊ミステリー!! 

2018.01.30

映画「ザ・リング/リバース」公式サイトより

 ホラー映画というものは、他のジャンルに比べて比較的リバイバルされることが多い。過去の名作が最新技術で蘇り、かつてはできなかった凄惨な描写が可能になったり、物語に新たな解釈を与えることで、全く別の新しい作品になっていたりもする。

 例えば、『ハエ男の恐怖』(1958年)から『ザ・フライ』(1986年)、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』(1978年)から『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)、『13日の金曜日』(1980年)から『13日の金曜日』(2009年)、『エルム街の悪夢』(1984年)から『エルム街の悪夢』(2010年)など、枚挙にいとまがない。昨年は『IT』(1990年)が『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』と生まれ変わり、日本でも大ヒットを記録したことは記憶に新しい。

 そして2018年ついにあのシリーズがリバイバルされた。鈴木光司原作の『リング』をベースにしたハリウッド映画『ザ・リング』のリバイバル作品『ザ・リング/リバース』だ。

 原作の小説版『リング』が刊行されたのが1991年。いまから27年も前のことだ。最初は発行部数も多くなく、さほど注目を浴びなかったという。しかし、その完成度の高い恐怖が徐々に伝染し、1993年に文庫化されてからパンデミックと言っていいくらいに数字を伸ばしていく。

日本版『リング』。貞子が出現するシーンは劇場内に絶叫が起きるほどであった。

 1995年に続編『らせん』が刊行され、同年に2時間ドラマとして『リング~事故か!変死か!4つの命を奪う少女の怨念』が放映された。1998年に完結編となる『ループ』が刊行され、ジャパニーズホラー映画の金字塔となった『リング』『らせん』が同時公開となったわけだ。その後、小説は前日譚となる『バースデイ』が刊行され、連続テレビドラマ化、ゲーム化などもし、『リング2』や『リング0』といった映画化もされ、様々なメディア展開がなされていった。

 ハリウッドに『リング』が渡ったのは2002年。制作費4800万ドルに対し、アメリカだけで1億2900万ドルという興行収入を叩きだし、全世界的なジャパニーズホラームーブメントの火付け役となった。その後、前作の大ヒットを受け2005年に『ザ・リング2』と続いた。

 ハリウッド版公開当時、貞子のジリジリと追いつめるような、静けさに宿る恐怖を表現できるのだろうか、と思ったのだが、作品自体は劇場版『リング』を踏襲した形であり、完成度は非常に高かった。『ザ・リング2』に関しては、監督が中田秀夫だったこともあり日本的恐怖を内包しつつも、完全オリジナルストーリーなこともあり、やや異色作となった。

 では今回の『ザ・リング/リバース』はどうだろうか。

 結論から言うと、ハリウッド版過去2作と比較し、非常に原作小説によせた内容であり、演出を現代風にリニューアルというより、アップデートされた心霊ミステリー映画と言える。原作者の鈴木光司が「最も原作に忠実」と語ったほどだ。

原作シリーズは現在のところ6作が刊行されている。

 そもそも原作小説は、横溝正史賞に応募した作品だけあり、ホラー・オカルトのエッセンスがあるものの、主人公が呪いのビデオに翻弄されつつも、その解明に理系的思考で立ち向かっていく姿は、ミステリー色の非常に強い作品であった。『ザ・リング/リバース』にはそのミステリー要素、つまり呪いのビデオの映像を解明していく主人公たちの姿が、物語の主軸となっているのだ。

 もちろんホラー映画ということだけあり、突然大きな音がしたり、来るぞ来るぞ……と煽ってから「ドーン!」と脅かす古典的なお約束演出もふんだんに散りばめられている。しかし、ハリウッドホラーにありがちな、グロテスク様子は皆無といっていい。日本的な静けさの恐怖と、ハリウッド的な煽りが上手く共存した作品なのだ。

 そういった意味では、『ザ・リング/リバース』はホラー映画というよりも、オカルト映画と表現したほうがしっくりくる。明確なモンスター、今作で言うサマラ(原作でいう貞子)、はここぞという場面でしか登場していこないし、悪臭立ち込めるドス黒いヘドロの中に手を突っ込んで、何かを探し求めるような不快さと絶望感が全編に漂う様は、まさにオカルトだ。

 なので原作ファンであるならば、『ザ・リング/リバース』は心の底から楽しむことができるだろう。原作の浅川和行と高山竜司が奔走したように、『ザ・リング/リバース』でも主人公が奔走する。サマラに辿りつこうとする手法は全く異なるものの、サマラに真っ向から立ち向かい、こんがらがった糸を少しずつ紐解いていくという姿勢は全く同じだ。

 ただし、結末は決定的に異なる。『ザ・リング/リバース』では早い段階で、原作や日本を含めた過去のリング関連作品で命が助かるキーとして、映像の「コピーを作る」というのが解明されている。では『ザ・リング/リバース』ではどんな結末が用意されているのか。それは自分の目で確かめてもらいたい。結末はまさにオカルトであり、圧倒的な絶望に身を包まれてしまうものだ。

 ちなみに本作の続編の可能性が制作会社のパラマウントから示唆されつつも、いまのところアナウンスはない。最後まで観終わっても、呪いの映像の意味について、未回収の謎が多く残ることに気が付く。ぜひとも続編を期待したい。
(文=Leoneko)

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