AKB48楽曲てんこ盛り『リンキング・ラブ』、アイドルの歴史をたどる味わい深い快作に

 つまり本作は、双方の資質が見事にミックスされ、また金子映画をずっと見続けてきた側からすると、これまでのフィルモグラフィの諸要素が見事に反映された金子映画の集大成的な快作に仕上がっているのだ。

 その中でもやはり特筆すべきは主要キャストで、主演の女子大生・美唯に扮するのはAKB48チームKに所属する田野優花。実際にアイドルとして活動しながら最近では宮本亜門演出の舞台に主演するなど歌やダンス、演技のスキルを高め続けている彼女が、91年の若者風俗文化を目の当たりにして戸惑いつつも克服していく前向きな姿は実にすがすがしい。

 そして美唯の若き日の母・由美子を演じているのが石橋杏奈。06年にホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリを受賞し、NHKの人気バラエティー番組『LIFE!~人生に捧げるコント~』シリーズでもおなじみ、また今年は映画『22年目の告白―私が殺人犯です―』など映画出演も旺盛な彼女だが、本作こそは彼女のキュートな魅力が開花した代表作と強く訴えたい。舞台映えする長身とダンスの上手さ、またどこか天然なお嬢様という設定を活かして、劇中では何と『うる星やつら』ラムちゃんのコスプレ姿まで披露してくれるというサービスぶり!

 美唯が由美子を誘って結成するAKB48ならぬASG16メンバーも、さすがは金子映画、アイドル・マニア垂涎のキャスティングがなされており、特に彼女らが大学のキャンパス内でミュージカル風に「制服が邪魔をする」を歌い踊るシーンは圧巻。そしてクライマックスは学園祭の舞台で「恋するフォーチュンクッキー」などAKBナンバーが華麗に披露されていく。

 91年当時の社会風俗もさりげなく強調されているが、それだけではなく超ド級のアイドル・オタクである大学院留年生・加賀(中尾明慶)の口によって70年代からアイドル文化がいかに変貌してきたかが厳かに語られ、同時に70年代を代表するアイドル浅田美代子を美唯の祖母役で、80年代はアイドルでもあった渡辺徹を美唯の現代の父親役で登場させるあたりもユニークで奥深い(加賀のお籠り部屋の中には、榊原郁恵のポスターも貼ってあった)。

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