AKB48楽曲てんこ盛り『リンキング・ラブ』、アイドルの歴史をたどる味わい深い快作に

1028_rinkin490.jpg『リンキング・ラブ』公式サイトより

 2017年の現代から1991年にタイムスリップした女子大生が、そこで若き日の両親と出会い、その恋路を応援するために母親とアイドルユニットを結成し、AKB48ナンバーを歌う!?

 映画『リンキング・ラブ』は何とも奇想天外な発想で展開されるコミカルなアイドル映画だが、実はこの中に奥深いテーマがいっぱい詰め込まれた快作である。

 91年とはいわゆるバブルが崩壊した年とされており、日本の運命が大きく揺り動かされてしまった年でもある。だが実際はこの時期、一体何が起きているのか多くの人々は気づいておらず、バブリーな日々を謳歌していたというのがその時代、青春真っ只中だった世代(私のことだ)の実感だ。

 同時にこの時代は“アイドル冬の時代”と呼ばれ、オタクの地位は今よりも低く、一方で男たちはアッシーくんやメッシーくんなどと呼ばれながら、ひたすら女の子に奉仕しまくっていた。いわば当時の男たちは身近なところにいる生身の女の子にお金を落としまくっていた時代であり、現代は身近に感じられるアイドルにお金を落とす、そういった違いなどから、本作は巧みにアイドル論を通して日本の社会風俗論を楽しく唱えることに成功しているのである。

 監督は金子修介。平成ガメラ3部作(95・96・99年)や実写映画『デスノート』2部作(06年)で知られる彼だが、映画ファンからすると人気漫画『エースをねらえ!』のパロディを狙ったデビュー作『宇能鴻一郎の濡れて打つ』(84年)で日活(当時は平仮名のにっかつ)ロマンポルノの中にオタク文化をいち早く導入して異彩を放ち、話題となった後、一般映画に進出。4人の美少女を全員美少年役で起用した『1999年の夏休み』(88年)や中山美穂や宮沢りえを起用したアイドル・コメディ映画の極み『どっちにするの。』(89年)、佐伯日菜子のデビュー作『毎日が夏休み』(94年)、また平成ガメラ・シリーズでは中山忍や水野美紀、藤谷文子らをブレイクさせ、最近では『プライド』(09年)で満島ひかり、『生贄のジレンマ』(13年)で清野菜名と、現在スター街道まっしぐらの面々をいち早く起用するなど、若手女優に対する目線の高さに定評のある監督である。

 金子監督自身、アイドル文化に深く精通しており、AKB48などのミュージック・クリップも多く手掛けてきているが、その一方でポリティカルな分野に対しても一過言あるツワモノで、ちょうど91年にはバブル期大学生の就活事情を描いた『就職戦線異状なし』を発表し、さりげなく当時の社会のありように警鐘を鳴らしていた。

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