面をつけてても大丈夫!乃木坂メンバー動員の『あさひなぐ』はアイドル青春映画の秀作に

 もともとこのプロジェクト、舞台版と映画版の両方を製作し、乃木坂メンバーを双方振り分けて出演させているのだが(ちなみに舞台版の主演は齋藤飛鳥で今年5~6月に公演された)、せっかくの群像劇なのだから、もっといっぱいメンバーの顔をチラリでもいいから見たかった。

 ただし、その意味では今回異彩を放っているのがなぎなた部の“心も体も大きい”大倉文乃役の富田望生(とみた・みう)で、さすがにこのキャラだけは乃木坂メンバーの中に演じることのできる者はいなかったようで、彼女の抜擢となったわけだが、今年は『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話』でも好演していただけに、続いての活躍ぶりがうれしい。男も女も美貌の持ち主ばかりが前面に出過ぎているきらいのある昨今、こういった個性派にもどんどん光が当たってほしいものである。

 また合宿で旭らをスパルタ特訓する尼僧役の江口のりこや、なぎなた協会理事長役の角貝和江など大人たちの怪、いや快演も見逃せないところで(このふたりが顔を合わしたときの、女同士ならではのおっかない火花のぶつかりあいよ!)、総じて本作はキャストの魅力を引き出すことに成功している。

 本作の監督は英勉。今年は鳥人間コンテストを題材にした『トリガール』も発表している彼は、ときに『貞子3D』(12年)みたいなおっかないものも撮ってはいるが、基本的には『高校デビュー』(11年)や『ヒロイン失格』(15年)など若手俳優の個性を軽やかに生かした快作を連打している才人であり、今回もその良さが大いに出ている。

 なぎなたの試合では顔が面で隠れてしまうので、アイドル映画としてマイナス要因になりかねないのではと懸念していたが、いざ見るとちゃんとそれぞれの立ち姿でキャラの見分けがつくように配慮されていたのもよく、おかげで乙女たちの一騎打ちをスリリングに堪能することもできた。しかも、そうこう見ていくうちに、このなぎなたという競技自体が実に女性の美しさを全身から引き立たせる優れものであることも理解できていく。この作品を機に、なぎなたを習いたいという女子も増えるのではないか?

 最終的にヒロインが成長したのかしてないのか、どこかあやふやなのも、むしろ本作では好印象で、それゆえにすぐさま続編を見たいという欲求が出てきてしまったほどだが、もしそれが実現するのであれば、ぜひとも次は乃木坂メンバーを総動員して展開していただきたいもの。

 アイドル映画であり、青春映画であり、スポーツ映画であり、群像映画であり、何よりも気合も根性も友情もオマヌケもずっこけも嫉妬も挫折も悲しみも……などなど、まさに“映画”そのもののエモーションと躍動感を心地よく見る側に与えてくれる快作として、これは強くお勧めしたい作品である。
(文=増當竜也)

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