■クソダサいスーツ
知っているぞ。
アンタゴニクスと名付けたあのクソダサいスーツ。
なんで茶色で、袖なしなんだ。
フレゴニクスを破る発明だそうだな。
おまえらは、後出しじゃんけんがどれだけ好きだ。
いっつもいっつも伏線なく唐突なサプライズ。まともな交渉はせず、デートだの殴り合いだの。
予告を見てみれば、「ザシュニナあああー」っつて真道が叫んでヤンキー漫画のタイマン勝負みたいなシーンがあったが、そんな展開は許さんぞ。
「隔絶体……言うなれば異方存在を閉じ込めるための檻です。これに触れさせればザシュニナを内部に封じる事が出来ます」
その後出しじゃんけんも卑怯だろう。
「あるといえば、ひとつだけ可能性があるんです」
そんなの後から言っていいんだったら、なんでもアリじゃないか。
あれほど私を信頼していた真道……。
簡単に私を悪に仕立て上げやがって……。
まあ、よい。
「ヤハクィザシュニナは驚きたいんだ。だからこの交渉は先に話すことが出来ない。サプライズには秘密が必要だからな」
馬鹿真道は、マジメにこんなことを言っているのか。
全知全能に近い存在の私が、おまえが何を企み、何を考えているか、言葉にして言わないだけでわからないとでも思ってるのか。
中学2年生がお母さんの誕生日にしかけるサプライズパーティーか。
筒抜けだ。
わかっておる。
「交渉のゴールは双方の望みを叶えること、だからアレは武器じゃなくアイツに一泡ふかせてやるための道具、ザシュニナ側が本当に望んでいるモノなんだ」
そうだ。私が望んでいるモノだ。
だから、知らないふりをしているだけ。
おまえが計画していることなぞ、すべてわかっておるわ。
■私が望む最大のサプライズ
私が望む最大のサプライズ。
私が、真道の前に現れ、殺そうと近づいたそのとき。
我がプレゴニクスを破壊して(そうだ、その時、アニメ的な法則によって、我が服は引き裂かれるだろう)(そして、ついでにお前の服も、だ)、
近づいてくるお前が私と交わすベーゼ。
しまった驚異的な学習能力のせいでついフランス語が出てしまった。キスだ。
私が望んでいる物。
それは、ただの交渉ではない。性交渉だ。
お前が私を殺すために交わす最高のキス。
知っているので、サプライズでもなんでもない。
なんでもないのに、この心の揺らぎは、なんだ。
そのシーンを想像するだけで、なぜ私のココロは、揺らぐのか。
人間が読むSF小説の傑作群たちがもたらす「揺らぎ」と同じ揺らぎを感じるのはなぜだ。
夢見る必要のない私が、夢を見るほどに揺らいでいるのはなぜだ。
この気持ちはなに? これは恋?
ば、ばかな。私は時をかける少女か。否!
『正解するカド』11話 ザシュニナ激白「真道は馬鹿か。私の気持ちを全く判っていない」のページです。おたぽるは、アニメ、作品レビュー、東映アニメーション、正解するカド、正解するカド KADO:The Right Answer、17年4月期アニメ、米光一成、SF、野崎まどの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!
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