『正解するカド』11話 ザシュニナ激白「真道は馬鹿か。私の気持ちを全く判っていない」

──「ヤハクィザシュニナは驚きたいんだ。だからこの交渉は先に話す事が出来ない。サプライズには秘密が必要だからな」
『正解するカド KADO:The Right Answer 』の11話。もはや破れかぶれになるしかない米光一成が全話レビューしているよ。*ここまでのレビュー

『正解するカド』11話 ザシュニナ激白「真道は馬鹿か。私の気持ちを全く判っていない」の画像1『正解するカド』公式サイトより

■泣きながら沙羅花とキス

 真道は馬鹿か。
「だけど、情報量が多ければそれでいいわけじゃない。時間をかければ処理出来てしまう。処理しきれないというのは莫大な量を短時間に摂取すること。集約した情報を一度に与えられることだ。つまり分かりやく言うとアイツが予想もしなかったことが起これば良い」
 おまえと私の次元がどれほど違ってるのか、まだわかってないのか。
 37だぞ。
 この宇宙の37乗倍の処理速度と37乗倍の広がりを持つ異方に存在するのが私だぞ。
 つまり、お前にとって、私は、全知全能の神に等しい。
 お前が、何をやり、何を企んでるのか、手に取るようにわかっておる。
 お前が、徭沙羅花と全裸で照れ照れしたり(これを人間たちが「朝チュン」と呼ぶことも驚異的な学習能力を持つ私は知っている)。
 死を覚悟して特攻する愚かさを美学と勘違いし、泣きながら沙羅花とキスしているのも(ピアノ曲が流れていれば、馬鹿ッて言う女とキスできる法則も、私は知っておる)。
 すべて私は探知しておるのだ。
 37乗倍の処理速度と37乗倍の広がりを持つ異方存在なんだぞ。
 分からないことは、ただ一つ。
 なぜそんな馬鹿な真道に、私が心を揺らしているのか。

■模造品の真道じゃ満足できないんです

 心の揺らぎなど、そう感情などというものは、37乗倍の情報処理速度を持つ存在にとっては、ただのノイズだ。
 そのようなものは、私にはほとんど存在しない。
 しないはずだ。
 人間の本を読みすぎたか。
 恋だの愛だの想像力だの、人間の本に登場する8割以上が、私にとって、不出来な情報処理の結果生じるノイズでしかない。
 とくにSF。
 初期設定のミスによって生じたバグを、そのまま暴走させ、バグったまま強引に収束させ、あたかも一つの整合性あるまとまりとして成り立ったかのように見せかける。
 それを思弁などと呼び、正当化し、あまつさえ作品などと言い出す。
 いや、整合性があれば、まだよい。
 バグと御都合主義のまま暴走し、風呂敷をひろげまくって逃亡する。
 人類は馬鹿か。
「泣かないで沙羅花さん」じゃないだろ、真道の馬鹿。
 模造品の真道で埋め尽くされた空間で泣いている私になぜ気づいてくれないのか。

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