投じた予算は3900万円超 下津井~『ひるね姫』の旅路で見た「聖地巡礼の魅力は作品よりも人」という事実

■あまりにも親切すぎる下電バスの運転手

IMGP3173.jpg「くらしき」の文字があるけど倉敷市街地には別のバスで30分あまり。完全に別の街である

 そんな町を歩いているうちに、瞬く間に時間は過ぎる。やってきたのは下電が運行する小型のバス。当然というべきか『ひるね姫』のラッピング仕様。けれども『ひるね姫』を目当てにしたような乗客は、まったく見当たらない。

 発車まで、しばらく時間があったので運転手に話しかけてみようと、一番前の座席に座った。

「運転手さん『ひるね姫』を目当ての観光客は多いんですか」

 私が訊ねると、運転手は答えた。

「あまり来てないですね。どうも散ってしまった感じはあります」

「えっ?」

「ほかにも『君の名は。』とか、ライバルのような作品が多いじゃないですか……実感としては少ないと思います」

「せっかく、干しタコのような名物も出てるのに」

「あれもね、冬のものじゃから」

「ウチのオカンもようたけど、干しダコよりも、イイダコのほうがええじゃろう」

「ああ、昨日も食べたんじゃけど、煮て食べると美味しいよなあ」

 最初に『ひるね姫』の話題を振ったことに、ピンと来たのだろうか。運転手は、こんなアドバイスをくれた。

「廻船問屋があるじゃろう。そこで、矢吹さんゆうて館長さんが詳しく教えてくれるから、いろいろ聞かれえ」

 廻船問屋とは、下津井にある「むかし下津井廻船問屋」という資料館である。そういうのがあることは、以前から知っていたけれども、私は行ったことがなかった。

「どこで下りりゃあ、ええんなら」

「私、この先のバス停で交代なんじゃけど、次の運転手に廻船問屋といわれえ」

 そういって、バスは出発した。その次のバス停で「休憩のため、交代します」とアナウンスして下りた運転手が、交代の運転手に「あのお客さんを、廻船問屋で下ろして」と伝えているのが窓の向こうから聞こえた。

 ジーンズの町らしく、運転手もジーンズ姿のバスは、ゆっくりと進んでいった。車内には、録音されたアナウンスで『ひるね姫』のロケ地案内。そして、スタンプラリーのスポットの案内が次々と流れていく。幾人かの乗客は、みな地元の人らしく観光客の姿は少ない。途中、毎日サンバカーニバルが開かれている「鷲羽山ハイランド」にも寄るが、乗り降りする人もいない。車社会では、わざわざ電車とバスを乗り継いで、遊園地に行こうという人も少ないだろう。

 バスは、よく晴れた瀬戸内の情景の中、鷲羽山から下津井への町へと下っていき、20分ほどで「むかし下津井廻船問屋」の目の前にある下津委漁港前の停留所へと到着する。

IMGP3201.jpgスタンプラリーのスポットにはポップも展示。ここでも聖地巡礼の客に会うことはできず。でも、逆にレア感があってワクワクした
IMGP3195.jpg下津井の街は時間が止まったようにレトロな雰囲気。かつて四国航路の玄関口だった時代をいまだに感じることができる
IMGP3205.jpg下津井の名産はタコ。これは土産品だが美味しい干しダコには5,000円くらいする高級なのも。ちなみに、イイダコの煮たやつはもっと美味いと思う

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