園子温監督&夏帆のタッグ作、再び! 『東京ヴァンパイアホテル』の婚活パーティーが妖しすぎる!!

 6月16日よりすでに全話配信されているが、正直なところ第3話までは時間軸がバラバラで、このドラマがどんな展開になるのかまるで予想ができず、途方に暮れてしまう。俄然盛り上がり始めるのは、第5話から。ホテル内に収容されていた人間たちだったが、ゲン(北村昭博)を中心とする血の気の多い一派がネオ・ヴァンパイアたちに武器を持って反乱を起こし、ホテル中が血の海地獄と化していく。エロティックかつシュールな第6話を挟んで、第7話ではブライアン・デ・パルマ監督&アル・パチーノ主演映画『スカーフェイス』(83年)のクライマックスをオマージュした大銃撃戦シーンに満島真之介が挑み、夏帆はホテルの長廊下でネオ・ヴァンパイアたちを次々と斬り倒す長回しシーンで魅了する。

園子温監督&夏帆のタッグ作、再び! 『東京ヴァンパイアホテル』の婚活パーティーが妖しすぎる!!の画像3ヴァンパイアホテルを経営するエリザベート(神楽坂恵)。魔力を使わずとも、男たちはその妖しい胸元に釘づけとなる。

 ノータリンな人間たちが一部のエリート/ネオ・ヴァンパイアによって管理され、家畜同然にSEXに励み、血を吸われながら生きながらえるという設定は、現実世界への痛烈な風刺。恐怖の婚活パーティーというアイデアは、ギリシャのヨルゴス・ランティモス監督の『ロブスター』(15年)の影響も感じさせるが、園監督が本作のいちばんの元ネタにしたのは19世紀の米国を震撼させた実在のシリアルキラー、ヘンリー・ハワード・ホームズだろう。H・H・ホームズはシカゴ万博で賑わうシカゴに3階建ての豪華ホテルを新築するが、このホテルに泊まった客のうち200人が消息を絶っている。H・H・ホームズはこのホテルの各部屋を秘密の通路で繋いでおり、ホームズと選ばれた客しか入れない拷問部屋や死体処理部屋も完備していたのだ。万博閉幕後に一連の事件が発覚し、人々は「殺人ホテル」「殺人城」と呼んで恐れた。『冷たい熱帯魚』(11年)では愛犬家殺人事件、『恋の罪』(11年)では東電OL殺人事件をモチーフにしていた園監督らしいではないか。

 ネオ・ヴァンパイたちがコルビン族と名乗っているのは、完成披露試写に登壇した園監督によると、ドラキュラ伯爵を幽閉したコルビンという人物が中世に実在したことから。園監督は昔からドラキュラ映画が好きで、ルーマニアで毎年開かれているトランシルヴァニア国際映画祭に昨年参加したことがきっかけとなり、虚実入り乱れる『東京ヴァンパイアホテル』が誕生した。園監督のもとからは満島ひかり、吉高由里子、二階堂ふみ……と若手実力派女優たちが次々と巣立っているが、若者の精気を吸収することで生命力をたぎらせるヴァンパイアとは、実は園監督自身ではないだろうか。女優たちは監督に身を委ねることで、妖しい美しさをまとうことになるのだから。
(文=長野辰次)

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『東京ヴァンパイアホテル』
企画・制作/日活株式会社
総監督・脚本/園子温
8話・9話監督・脚本/久保朝洋、松尾大輔
8話・9話脚本/継田淳、碇本学
出演/夏帆、満島真之介、冨手麻妙、神楽坂恵、安達祐実、斎藤工、松井玲奈、中川翔子、高月彩良、今野杏南、吹越満、渋川清彦、森七菜
Amazonビデオにて6月16日より全話配信中
(c)2017 NIKKATSU

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