【劇場アニメレビュー】「さすおに!」 安定感抜群の秀作『劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女』

 今回もTVシリーズに負けず劣らずのハードなストーリーだが、原作イラストから始まり、本作のキャラクター・デザイン&総作画監督も務める石田可奈が構築した陽性の画が、そのシビアさを緩和してくれている。

 TVシリーズで演出&画コンテを担当していた吉田りさこ監督は、水着やお風呂といった、いわゆる深夜アニメの映画版にありがちなファンサービス・ショットを披露しつつも、そこではしゃぐことはなく、特に女性キャラたちと少女がお風呂に入るシーンでも、彼女らの感情こそを大切にしたデリケートな演出が施されているあたり好感が持てる。

 ストーリー設定などもSFものを見慣れた目からするとそう目新しいものではないのだが(サブタイトルの“星を呼ぶ”というのも、なるほどそういうことなのねと見ていて納得)、語り口が良いので見飽きるところがなく、全体的に淡々とした雰囲気ながら、それゆえにいざ何か事が起きたときなどのインパクトも含めて見る側の感情の起伏をより刺激してくれる。

 さすがに原作を読んでいないとキャラクター同士の細かい設定などがわからなかったりはするものの(原作ファンいわく、《追憶編》《来訪者編》を読んでおくと、より楽しめるそうです)、作品そのものの体勢にさほど大きな影響を及ぼすことなく、むしろノリとテンポで受け流しながら全体を堪能したほうが得策ではあるだろう(その意味では原作未読の観客に観賞後、原作への興味を募らせる心憎い配慮がなされている?)。

 達也役:中村悠一と深雪役:早見沙織、双方の才色兼備な声の魅力は劇場版においても鉄壁のごとき貫録で、特に深雪が「お兄様」と一言つぶやくだけで作品世界がぐんとグレードアップしていくあたり、銀幕の大画面を見聞きしながらエクスタシーすら感じてしまうものがあり、またそれにふさわしい行動を達也が淡々と繰り広げていくあたり、深雪の名セリフ「さすがです。お兄様!」がこちらの脳裏にまでずっと響き渡っているかのようであった。

 正直、TVシリーズをそこそこ見ている程度で、さほどの思い入れがないままに接した本作ではあったが、その分拾い物のプログラムピクチュア的佳作にぶち当たったような気持ちよさがあった。

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