ファンタジー作品を楽しもう! 『セントールの悩み』から学ぶデミヒューマン講座

■獄楽 希(竜人型/ズメウ/ルーマニアの民話)

1706_sen_nozomi00.jpgTVアニメ『セントールの悩み』公式サイトより

 竜人と言えば東洋の龍、例えば西遊記や封神演義に登場する「東海竜王敖廣」、七福神のメンバー「弁財天」などの「人間にも化けられる龍」を想像されるかと思います。ですが東ヨーロッパの一国ルーマニアには、本作における「竜人」に比較的近い特徴を持つ独特のドラゴン「ズメウ」の伝承が存在しています。

 ズメウは、ルーマニアの民話に登場するデミヒューマンです。人間とほぼ同じ骨格ながらも頭や手足、胴体はドラゴンそのもの、全身が硬いウロコに覆われており、尻からは大きな爬虫類の尻尾が生えているという、人間の身体パーツがそのまま西洋の竜と置き換わったような姿をしています。背中の翼や飛行能力の有無は、個体によってまちまちです。

 そして何よりも化け物じみた外見ながら非常に賢く、人間との会話が可能なのはもちろん、独自に国を作って治めるなど社会性も高い、というのが大きな特徴と言えます。

 ルーマニア民話におけるズメウの役割は、日本における「悪い鬼」そのもので、彼らは主人公に退治される悪役なのですが、その気質は全く異なります。男のズメウは力が非常に強く、いかめしくもさっぱりとした武人的な気質をしており、真正面から1対1で殴り合う素手での格闘を何よりも好みます。また主人公側の無作法や卑怯な行いに遭っても1度は許す寛大さを美徳とするなど、とても悪役とは思えない性格をしているのです。

 一方で女性のズメウは、例外こそあるものの基本的には人間視点からの美女であることが多く、力はそれほど強くありませんが得意とする魔術で主人公を陥れるなど、若干ながらも悪役らしい性格をしています。

■御魂 真奈美(翼人型/マイルーン人、天使/ファンタジー作品、宗教的象徴)

1706_sen_manami.jpgTVアニメ『セントールの悩み』公式サイトより

 ただ単に「人間の背中に翼が生えている」と言えば、イギリスのファンタジー作品『エルリック・サーガ』に登場するデミヒューマン種族「マイルーン人」でしょう。ですが本作における翼人型は背中の羽根のほか、頭の上に輪っか状の毛が生える特徴を持っており、これはいわゆる一般的なイメージにおける「天使」だと思われます。

 実はこの天使、というのは非常に厄介な存在で、解説を続ければ本が1冊出来上がってしまうほどの情報量です。よってここでは“ドヤれる雑学”として「現代におけるいわゆる天使、と設定された存在の頭の上に黄金の輪っかがある理由」を解説するに留めます。

1706_sen_iroiro.jpg<数々の絵画から寄せ集められたイエス・キリストの肖像画>

 さて、まずはキリスト教のできるだけ古い宗教画、難しければ日本の仏像や仏教画などを思い出してみて下さい。

 思い起こせたでしょうか。

 何を想像したにせよ、思い浮かべた聖人や仏の背後にはおそらく、黄金やそれに近い色の円盤や集中線、もしくは太陽のようなものが描かれているはずです。もしも違った場合は、それがあるものを無理やりにでも思い出していただききましょう。

 話を戻しまして、そのような聖人の頭の後ろに描かれる円盤は、その人物の神々しさを記号化した「光背(こうはい)」と呼ばれる表現方法です。古い西洋の宗教画において、光背は聖人の頭の後ろに描かれるものであり、顔がどちらを向いていようが、絵を正面から見て人物の後ろ側に配置する、というのが伝統的な手法でした。

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