ファンタジー作品を楽しもう! 『セントールの悩み』から学ぶデミヒューマン講座

■名楽 羌子(角人、長耳人、牧神人型/サテュロス/ギリシャ神話)

1706_sen_kyoko.jpgTVアニメ『セントールの悩み』公式サイトより

『セントールの悩み』作中には、動物の耳と角を持つ形態が複数存在します。それら登場人物は「頭の上部分から動物の耳が生えている」という特徴を持っており、角や尻尾が生えているか、下半身が蹄状かなどの形態によって呼ばれ方が異なるようです。なお、羌子は角人と表記されています。

1706_sen_ninf.jpg<サテュロスの描かれた絵画。周辺にいるのは女性型の妖精ニンフ>

 これら形態の特徴に比較的一致するのは、『プリニウスの博物誌』などの犬人「キュノケファロス」、スコットランドの妖精を元ネタとする猫人「ケット・シー」などが挙げられます。それらの中で最も近いと思われるのは、ギリシャ神話に登場する半人半獣の精霊「サテュロス」です。

 サテュロスとは、基本的には「人間の上半身、頭には角、人間と同じ場所にある耳は尖っており、下半身は2本足ながら毛の生えたヤギのもので蹄があり、尻からは大きな尻尾が生えている」という姿で描かれる存在で、ディオニュソスというギリシャの豊穣神と強い関連性を持っています。

 ただし共通性があるのは、ひとまずのところ外見のみです。サテュロスは非常に享楽的な性格で、音楽と酒をこよなく愛し、毎日を歌い踊り騒いで過ごすことを何より好みます。また非常に色を好むスケベな精霊であり、ディオニュソス神の女性信徒たちとの乱交や、女性型の精霊であるニンフを追いかけ回しては性的な快楽をむさぼっています。

 また、サテュロスは彫像や絵画などでしばしば、並外れて巨大な男根を勃起させた姿で描かれています。これは豊穣と酩酊の神ディオニュソスとの関連性、つまりサテュロス自身にも豊穣の属性があることを表しているものです。

 これらを踏まえた上で、作中における羌子を改めて確認してみましょう。まず外見は「頭上から縦長に伸びた動物の耳、頭の横に角があり、動物の尻尾が生えている」、性格は「非常に頭が良く、冷静沈着」と設定されています。これだけでも今のところ共通点は外見のみ、ということがご理解いただけるかと思います。

 余談となりますが、古代の絵画や彫刻において、サテュロスは何の変哲もない普通の人間、尻尾だけが生えた人間、下半身が2本足の馬など、様々な外見で描かれていました。先述した「人間の上半身にヤギの下半身、頭に角、尖った耳」という、現代におけるサテュロスのイメージが完全に固定したのは13世紀以降のできごとです。作中のこれら形態を持つ人々は13世紀より前のサテュロスがモデル、という可能性はあるかもしれません。

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