ファンタジー作品を楽しもう! 『セントールの悩み』から学ぶデミヒューマン講座

――そっくりだけれど別種族。森の賢者「ケイロン」

 ただし、昨今の作品におけるケンタウロスの特徴を持つデミヒューマンは、ケンタウロスと同じ外見的特徴を持ちながらも、まったく異なる経緯で生まれた個体「ケイロン」をモデルとしたものが多いように思われます。

1706_sen_04.jpg<ギリシャ神話の英雄アキレウスに教育を施すケイロン。頭の月桂冠は、その人が高い地位と名誉にあることを示す記号である>

 ケイロンは「男神が馬に変身し、その姿で女性と交わった」ことにより、半人半馬の姿で生を受けた存在です。このように「神が動物の姿で交わった結果、その動物の特徴を持つ子が産まれる」という神話は世界的に見られるもので、例えば象の頭に人間の身体を持つヒンドゥー教の神、ガネーシャにも同様の逸話があります(象の頭となった理由を説明する神話は複数存在しています)。

 神の血を引くだけあり、ケイロンは優れた頭脳と身体能力を持っていました。数多くの神々から音楽、医術、芸術、狩猟、天文学、武術など数々の叡智を授けられ、さらに弓術や薬草学にも長けており、その医術と薬草学によって数多くの人々を病から救ったとされています。

 文武両道の賢者ケイロンは数多くの人材を育てており、最強の英雄ヘラクレス、無双の戦士アキレウス、現代でも世界中で使われている医の象徴「アスクレピオスの杖」で知られる名医アスクレピオスなど、数多くの人物に知識と武芸を授けています。古代ギリシャの英傑はほぼ漏れなくケイロンの教育を受けている、と言っても過言ではありません。

 このようにケイロンは、ケンタウロスの外見を持ちながらも、全くの別種族と言える存在なのです。ただ『セントールの悩み』作中においては「人虎型」という、人馬型と同じ形態ながら下半身が虎で狩猟に特化した特徴を持つ、絶滅した形態の存在が囁かれています。これは姫乃のような人馬型をケイロン的な存在として、人虎型を本来のケンタウロス的な存在として描くためなのかもしれません。

 ちなみに、タイトルに入っている「セントール(Centaur)」は、ギリシャ語「ケンタウロス(Kentauros)」の英語読みです。各国神話の登場キャラクターは、基本的には英語読みが一般的な呼ばれ方となるのですが、ケンタウロスの場合はギリシャ語読みのほうが先に広く知られるようになったため、今でもそのように呼ばれることが多くなっています。

 ケンタウロス及びケイロンに関しては、こちら「『Fate/Apocrypha』から学ぶ! 一番わかりやすい『FGO』原典紹介(前編)」も参考にして下さい。

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