思わず全巻買ってしまった……角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』は、大人が読むとトンデモすごい!

 フラットになるべく多くの情報を記述する小学館のシリーズが幕の内弁当なら、角川まんが学習シリーズはメイン食材で勝負を賭けるトンカツ弁当といったところ。

 例えば、第11巻「黒船と開国」。ここでは、坂本龍馬をはじめとする幕末の志士たちの活躍に重点を置いている。龍馬どころか、吉田松陰が黒船で密航しようとしたエピソードも挿入。命を賭けて国を変えようとした志士たちの生き様というドラマ性が重視されているのである。

 しかも、ドラマばかりかと思いきや、幕末群像ではちょっとマイナーな清河八郎が登場したかと思えば、2コマ後には暗殺。わざわざ登場させる必要があるのかと唖然してしまう。かと思いきや、龍馬の活躍は、ここまで必要あるのかというくらいにページ数が多い。勝海舟を斬るつもりで訪問したら弟子になったエピソードなんかも挿入されている。

 この、情報量よりもドラマ性重視の配分。いうなれば、歴史叙述のバランスの悪さが、基礎知識を持っていると、とてつもなく面白く読めてしまうのだ。

 その「なんで、こうなったんだろう……」というバランスの悪さが際立つのが、第14巻の「大正デモクラシー」。昭和初期までを扱うこの巻。満州事変の描写では石原莞爾も誰も出てこない。にもかからず、盧溝橋事件では、牟田口廉也が登場。牟田口廉也といえば、インパール作戦で知られる戦史に名を刻む愚将なのだが、あえてここで出す必要がどこにあったのか……? さらに、平塚らいてうが美少女になっているとか、ある程度歴史に詳しくなった大人が見ると「ねえよ!」とツッコむしかない。ほかにも、蘇我馬子がすっかり悪人面だったり。とにかく、メインで描かれる人物に対立しそうな人間は、悪役っぽく描くのがコンセプトの様子。

 そんな妙なところばかりが気になってしまう、このシリーズ。でも、バランスの悪さは決して批判的にいっているのではない。本来の読者層である子どもたちに教科書的に淡々と記すのではなく、ドラマ重視でまず「歴史って面白い」と興味を持ってもらおうとした結果なのだろう。大人が読んで目に付くバランスの悪さは、稚拙だから笑えるのではなく、歴史のとらえ方というのは色々あるということが見えて面白いのである。
(文=昼間たかし)

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