『月がきれい』9話 好きな人とLINEしている時って、あんなニヤけた顔になってるんだね、という恋テロ

 千夏(演:村川梨衣)、葵(演:白石晴香)の陸上3人娘で並んでお弁当を食べるシーンは、お母さんのお疲れ様弁当と3人の涙に思わずこちらももらい泣き。単にお別れだからということだけではなく、3人とも部活をやりきったという実感があったから涙が素直にこぼれてしまったのだと思う。

『月がきれい』は小太郎と茜の恋愛がストーリーの中心なんだけど、千夏や比良(演:田丸篤志)を「主人公の恋のライバル」という類型的なキャラにしていないところが良い。あくまで中学生の群像劇なのだ。3人の時間を邪魔しないように振る舞う比良もいい味出していた。今週は恋テロというより、「ああ、青春っていいなぁ」って感じだった。

■視聴者に余計なストレスを与えない展開

 大会からの帰り道、電車の中で千夏と比良が叶わなかった恋を語る。このシーンは2人にだけ夕陽があたっていて、両者の心の黄昏と光の具合がシンクロしている。比良はまだ茜にちょっと未練がありそう。この後、一波乱あるかもしれない。

 茜が引っ越してしまう(かもしれない)ことを千夏と比良が小太郎より先に知ってしまうが、わだかまりが生じることなく茜は小太郎にきちんと知らせて共有している。このあたりの視聴者が感じるストレスを『月がきれい』は先回りして丁寧に除去している印象がある。それが作品全体への好感度にもつながっている。

 ただし、小太郎の進路に関しては父親が理解を示していたが、これではまだ終わらないはず。あのお母さんは絶対に黙ってないだろう。小太郎のお父さんって相手と目を合わせて話すのが苦手みたい。その分、きっと小説が好きで、それが小太郎に影響したのだと思う。いい人だ。
(文/大山くまお

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