ヘタな人はビビり・批評家・完璧主義・腰が重い・頑固。専門学校講師に聞く物語づくりのウマい、ヘタとは?~ヘタの研究①

■脇役や敵役の方が主人公よりも魅力的になってしまったらどうする?

――『ジョジョの奇妙な冒険』(作:荒木飛呂彦/集英社)第4部で吉良吉影が強すぎて、「もうだめだ、何をしたって勝てっこない」と手に汗握りつつ読んだことを思い出しました。主人公の魅力だけでなく、敵役の魅力もないといけないんですね。

 書いているうちに主人公よりも敵役や脇役のほうが魅力的になってしまったというケースも多いと思うんです。この場合、どうすればいいのでしょうか。

谷口 原因は二つあります。一つは「主人公を間違えている」場合です。作品を書き進めていくと、キャラのことがわかってきます。「こんな魅力があったんだ」と気づく場合があります。主人公よりも脇役や敵役を書いてみたい気持ちが大きくなってきた場合は、本当に描きたいキャラが見つかったということであり、そちらを主人公にしてしまうのもありです。また、スピンオフという形で、脇役や敵役を主人公にした別の物語をつくってもいいと思います。

 もう一つの理由は、「主人公のキャラクターをうまく立てられなかった」という場合で、これは改善が必要です。改善の方法のひとつに、主人公以外のキャラクターに主人公についての「噂話」をさせる手法があります。昔から広く行われてきた方法ですが、非常に有効な方法です。多くのキャラが主人公に注目するようなシチュエーションを設定し、敵も味方も周囲のすべてのキャラに主人公についてコメントをさせてください。すると、書き手の興味も読者の興味も自然と主人公に向いていき、主人公が引き立っていきます。

――脇役は主役に比べ制約もなく自由にできる分、いつの間にか思いがけずいい感じに「育っていた」ケースはプロの作品でもよく見かけます。主役も、のびのびさせるのが大事なのでしょうね。

■「書きたくても書けない」「書いたけれど仕上げることができない」への処方箋

――「ヘタ」な作品に対し、どう指導しているのでしょうか?

谷口 どんなストーリーをつくろうかと考えるのをやめさせ、どんな人物を描こうかということを、発想の出発点にするよう指導しています。「この人物を書きたい!」が執筆の動機になるように、ですね。どんな人物が、何をしていくか、その過程でどのように変わっていくか、それを描いていけばおのずとストーリーが浮かび上がってきますから。

――下手、上手以前に、物語を書く場合、書きたくてもまったく書きはじめることができないというケースもありますよね。

谷口 その場合は主人公の人物像をつくったら、絵画でいえばスケッチ的にとりあえず浮かんだシーン、セリフ、会話、出来事、事件などの短いエピソードを書かせます。まとめる必要はありません。思いつくままに、細かいことを考えず、気軽に、無責任に、短いスケッチ的文章をいくつか書いていると、だんだんと構想が浮かび、広がってきます。

――書いたはいいけれど、今度は終わらせることができない人も多そうです。書きかけの話ばかりが何遍もできて……というような。

谷口 完成させられない原因は完璧主義にあります。完璧になるまで完成させないという癖を捨てさせます。妥協を学ぶということですね。

――その「妥協」がなかなか難しそうですが。

谷口 具体的な「妥協」の方法として、例えば、いちばん描きたいことが描ければそれ以外は多少目をつぶることです。自己評価で「50点の出来」を目指し、自分が目標としている仕上がりの半分ができていればOKとするのもいいでしょう。

 完成させなければ自分の作品を判断、評価することは難しいですからね。50点でもいいので、完成させることが大切です。そして、その50点の水準をアップさせていくことを心がけるようにすることです。そうすれば、一年後の50点は現在の80点以上の水準になっていきます。

――妥協が難しい人にとって、「完成させた50点」を積み重ねれば、一年後80点になっているというのは勇気の沸くアドバイスですね。完成させないと、そもそも点数もつかないわけですから。

谷口 あとは、一回で完成させるという考え方を改めさせることも指導では心がけています。不完全でもいいから、ストーリーが少々破綻していてもいいから、とにかく完成させることです。それからブラッシュアップしていけばいいのですから。

――さっさと終わらせて楽になりたい、じゃダメなんですね。二次創作(既存作品のパロディ)なら書けても、一次創作(オリジナルストーリー)が書けない人にはどう指導していますか?

谷口 既存のキャラクターを動かす二次創作はうまく書けて、一次創作が書けないということは、「キャラクター」がつくれないということです。しかし逆をいえば、二次創作が苦も無く書けるなら、「文章力」や「ストーリーをつくる力」、「描写する力」は十分あると言えます。だからこそ、描きたいキャラクター、興味が湧く人物をつくることに力を集中するよう指導しています。

――キャラクター作りにコツはありますか?

谷口  友だちや知り合いをモデルにするのもいいですし、どうしてもキャラをつくることが難しい場合は、歴史上の人物や偉人などを主人公にしてみる。そこに「もしも、織田信長がめちゃくちゃ小心者だったら」とか「もしも、聖徳太子が引きこもりだったら」といったように、もしも法をつかってギャップ、意外な一面を加えてみるといいですよ。ユニークで、動かしやすいキャラクターがつくれます。

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