【今月の不健全図書レビュー】『体当たり　真剣交際』(だん) ホモ好きしか買わないよ……。本音も漏れる新しすぎる作品。

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『体当たり　真剣交際』（リブレ）

――東京都をはじめ、地方自治体の「青少年・治安対策本部」では、毎月“不健全図書”を挙げ、自主規制団体らと共に審議を行っている。この審議結果は毎回公表されるものの、審査過程での自主規制団体の声が顧みられることはほぼない。エロにせよ何にせよ、どこか尖った作品を大の大人が色々な立場から評価するという、そんな貴重な意見が無視されるなんてもったいない！　このコーナーでは、“不健全図書”に指定されたマンガなどを自主規制団体の声と共に紹介していきたい。つまり、クラウド・ファンディング（群衆による資金調達）ならぬ“不健全図書”クラウド・レビュー（群衆による批評）、はじまり、はじまり～！

【今月の指定図書】

　今月の指定は2冊。ほぼ指定席になったBL枠に入ったのは、だん『体当たり　真剣交際』（リブレ）が入りました。近年のBL単行本には、ネットで公開の後に書籍化されるものが増えています。そうした中で増加しているのは、ネットでは18禁だったにも関わらず、紙では全年齢になっているもの。これは、現状のBLの流通状態を考えると出版社単位ではどうしようもない問題。ただ、東京都の側もセレクトにあたって、ネットでは18禁で公開していることをチェックしているフシがあります。やはり、なんらかの対策を取るか。あるいは、開き直るか決断の時期が来ているのではないでしょうか。

（以下、別記のない限り、【】内は「自主規制団体からの聴き取り結果」より引用）

　さて、この作品集はメチャクチャ「新しい」のです。バンバンセックスしまくるBLなのですが、ヤラれる側の男子はなぜか感じるとオッパイが女のコみたいに膨らんでいきます。これは、全身で感じていることを表現する手法なのでしょうか。そして、表現がやたらハイテンションです。

　冒頭の収録作「体当たり痴漢電車」はラグビー部を舞台にした輪姦作品なのですが、とにかくテンションがオカシイ。

「俺が尻穴のペネトレイター」

　とか、なんだかよくわからないセリフが飛び出します。ペネトレイターとは、ラグビーにおいてトライに持っていく選手のこと……らしいです。

　そんなハイテンションかつマンガとしても面白い作品集なのですが、指定は面白すぎたのが原因なのでしょうか？

　自主規制団体からの聞き取り結果は、指定該当6・保留2・指定非該当6と意見は拮抗しています。

　やはり問題とされたのは、ホモセックスシーンの多さ。【全編性交シーン。一部人格を否定する表現もある】【体液や擬音の描写が濃密】【マニアックな内容ではあるが体液や擬音描写が多く性的感情を刺激する】と指摘されています。要は、エロすぎる！　ということでしょうか。

　対する、指定非該当を主張する意見では【内容的には一般読者の性的感情を刺激するものではない】という指摘も。要は、ホモを読んで楽しむ人以外は、そもそも買わないよということでしょう。さらに【性器は以前同社が指定を受けた図書よりも修整されている】と出版社の努力を取り上げかばう意見も存在します。

　今回の意見の分散からわかるように、事前の聞き取り結果では、指定該当と非該当が拮抗しても、審議会では指定されてしまうわけです。じゃあ、なんのための事前の打ち合わせ会なんだろう……。そもそもの制度の意味が問われてしまうような結果となっているのを、東京都は理解しているのでしょうか？
（文＝昼間たかし http://t-hiruma.jp/）

今月の自主規制団体の声
【出典】東京都青少年健全育成審議会「自主規制団体からの聴き取り結果」より
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/pdf/09_singi/682/682siryou8.pdf