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劇場アニメ『BLAME!』は、監督の“実写的な感性”とアニメの魅力が融合された作品!?/瀬下寛之監督インタビュー

2017.05.20

―― 弐瓶先生も『シドニアの騎士』のクオリティを見て、信頼された部分も大きかったのでしょうね。ただ、今回は原作通りというよりも、新たなエピソードといったストーリー展開です。

瀬下 ちょうど弐瓶先生が『シドニアの騎士』の連載を終えられた後だったこともあって、毎回ミーティングに参加してもらえたり、とても深く企画に入ってくださいました。しかも、「原作は難しい作品なので、映画のほうは解りやすくしましょうよ」とご提案をいただき、一気に加速したんです。

セーフガードの不気味さは原作以上(!?)

 もともと僕らが『シドニアの騎士』で目指したのは、弐瓶先生のディープでハードなSF世界をアニメーションならではのポップな表現で解釈し、多くの人に見てもらえるようにすることでした。今回も『BLAME!』の入門編にしようということで、原作の魅力でもある荘厳・壮大なSF世界観に、普遍的テーマのシンプルなストーリーを盛り込むというコンセプトになっていきました。

―― その世界観が今回、見事に描き出されていますね。

瀬下 そうですね。弐瓶先生が総監修という形で深く関わってくださったおかげで、原作のエッセンスなどはきちんと表現できていると思います。先生と共に作り、練り込んだストーリーや狙いなどを村井さだゆきさんにお伝えし、映画脚本として構成していただきました。

―― 瀬下監督の狙いというのは、具体的にはどのようなところだったのでしょうか? 原作の主人公・霧亥が、今回はあからさまな主役という感じで登場しないのも意表をついています。

瀬下 そうですね。基本的な主役は人間です。飢餓であと1カ月しか持ちこたえられない集落を救おうとする少女づると、“世界を人間に取り戻す”ネット端末遺伝子を探し求めて永劫の旅を続ける霧亥とが邂逅する話であり、いわば霧亥はこの物語の世界そのものを象徴するキャラクターです。

今回は少女・づるをはじめとするオリジナルキャラクターが登場する。

―― 原作ファンは最初霧亥がなかなか登場しないので驚くかと思いますが、映画ファンとしては時代劇や西部劇のアウトロー・ヒーローのような登場の仕方が実に映画的でワクワクしました。

瀬下 実はハードSFでありながらも、西部劇……というより、マカロニ・ウエスタンみたいにしたかったんですね(笑)。尊敬するセルジオ・レオーネ監督の映画に登場するようなさすらいの男が、餓えて絶滅寸前の集落にふらりと立ち寄ったことからドラマが生じる。ですから音楽もそれとなくエンニオ・モリコーネを意識した曲調にしていただき、テーマメロディと共に霧亥が現れる。一方ではハードSF版『男はつらいよ』でもありたいと思ってます(笑)。

―― ですので、映画ファンからすると、実に映画的オマージュの韻を踏んだ映画になっていることに気づかされますが、それによって『BLAME!』という作品もまた新たに生まれ変わったという感慨もありますね。

瀬下 弐瓶先生ならではの圧倒的個性の世界観があればこそ、王道ともクラシックともいえる映画的スタイルをミックスして面白いし、結果的に新しい味わいになったのかなと思います。

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