【劇場アニメレビュー】“アーティスト”湯浅政明監督がやりたい放題!?『夜明け告げるルーのうた』

1705_lou.jpg『夜明け告げるルーのうた』公式サイトより

 4月に湯浅政明監督の快作『夜は短し歩けよ乙女』を紹介させていただいたばかりだが(記事参照)、それからおよそ1カ月後、早くも湯浅監督の新作『夜明け告げるルーのうた』が全国の映画館にお目見えとなる。これを快挙と言わずして何と言おう!

 もっともこの作品、『夜は短し歩けよ乙女』よりも先に作られていたもので、公開時期がたまたま逆になっただけなのだが、いずれにしても湯浅監督作品が立て続けに劇場公開されるという喜びというか奇跡というか、今の日本映画界におけるアニメーション映画の位置づけを改めて思い知らされる。

 さて『夜明け告げるルーのうた』は、舞台となるのは、ある寂れた港町・日無町。両親が離婚したために、都会から両親の故郷に父とともに引っ越し、そのまま周囲と距離を置き、どこか心を閉ざした日々を過ごす中学生のカイ。

 彼の唯一の楽しみは自作の曲をネットにアップすることだったが、そんなある日、彼はクラスメイトの国男と遊歩にバンド「セイレーン」に誘われ、しぶしぶ赴いた練習場所の人魚島で、人魚のルーと出会う。

 音楽を聞くと、尾ひれが足に変わって踊り出してしまう無邪気なルーに、カイはいつしか心を開くようになっていく。しかし、古来より日無町では人魚は災いをもたらす存在として忌み嫌われていた……。

 ストーリーだけ採ると、割かしよくあるファミリー向けファンタジーものではあり、実際本作もそういった趣旨で企画されている節は感じられるが、やはりそこはそれ、湯浅監督だけにそんじょそこらの“良いお話”の域にとどまるはずもない。

 絵柄も従来の湯浅作品に比べるとほんわか親しみやすいものになっており、ポスターワークだけ見ると、ルーのキュートな絵柄に「湯浅作品も萌え?」と勘違いしてしまうほどだが、実はこの作品、作画も演出も一見ファミリー向きでありながら、いや、むしろファミリー向け作品であるようなふりをして、大胆不敵にも湯浅監督がやりたい放題、アバンギャルドに演出しまくっていることが、いざ鑑賞し始めると一目瞭然なのである。

 特に中盤の浜辺のシーンで音楽に乗せてルーが現れ、町の人たちまでいつしか踊り出してしまうシーンは“楽しいミュージカル・シークエンス”と一言でくくるのをどこかためらわせるほどにシュールでポップ、それでいて躍動感に満ちているのだが微妙にゆるい(!? しかし、それこそが湯浅作品の本領か)、それこそ湯浅監督以外の何者にも真似できない唯一無二の秀逸なものになっている。

【劇場アニメレビュー】“アーティスト”湯浅政明監督がやりたい放題!?『夜明け告げるルーのうた』のページです。おたぽるは、アニメ作品レビューの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!