ミリオタライター二木知宏の「武器で見る映画」第13回

インドから西洋まで! 剣戟の歴史を受け継いだ『無限の住人』

 万次以外が使う武器も紹介しましょう。敵である逸刀流のメンバーの黒衣鯖人(北村一輝)の武器について。この鯖人、最初は鎧兜に身を包み、面までつけていたため誰かわかりませんでした。そんな全身装備の人物が使うのは、手裏剣のような武器です。見た目は明らかに手裏剣です。しかし、投げ方が違います。真ん中に空いた穴の中に指を入れ、くるくる回しながら投擲しています。この投げ方をする武器、それは、古代インドの投擲武器、「チャクラ」です。「チャクラム」とも呼ばれています。日本だと「戦輪」と表記されたりします。忍たま乱太郎の滝夜叉丸先輩が使っている武器ということで僕は最初に知りました。この武器の特筆すべき点は、投擲武器であるにもかかわらず、突き立てるわけではなく、切りつける武器なのです。指を入れて、回し投げるのには、こういった切りつける意味があるのです。

 他にも逸刀流の刺客、乙橘槇絵(戸田恵梨香)が使う武器、三節棍。モデルはそのまんま「三節棍」でしょう。これは、中国の武器です。「棍」とは木の棒で、人類の武器の歴史の中で、最も基本的な武器。棍とは一節の木の棒なので、一節棍と言えるでしょう。2つになると二節棍、あるいは双節棍、イメージしやすいのがヌンチャクです。短い双節棍がヌンチャクになるわけですね。よく疑問視されているのが、「三節棍って派手だけど、強いの?」と言うものです。結論から言いますと、向き合って闘うなら棍の方が圧倒的に強いです。理由は先述した通り、ギミックを増やせば増やすほどもろくなる、ということと、有効射程を存分に発揮できる突きが、三節棍では弱いということです。ですが、この強いの? の質問は本来的外れです。なぜなら、三節棍自体、向き合って闘うようにできていないからです。三節棍を始め多節棍の有用性は、隠して持ち歩ける点にあります。それこそ大きくて槍や棍では、城内に持ち込むこともできません。そこで、できたのが三節棍などの多節棍なわけです。

 逸刀流以外のキャラクターの武器も興味深いものが多くあります。その一つ、尸良(市原隼人)の武器です。片刃の刀で、反対側はノコギリ状になっています。非常に凶悪な武器で、キャラクターの性格を表すのに一役買っていますね。この武器、架空だと思う人もいると思うんですが、実は似ている武器が存在します。それが西洋の武器、「ソードブレイカー」です。片面が刃になっており、その反面が凸凹になっている短剣です。この凶悪そうな武器、さぞ多くの敵を惨殺してきたのだろう、と思いがちですが、実は防御用です。刃の反対側の凸凹で、相手のレイピアなどを受け止めひねって破壊するのです。あくまで対レイピア用なのです。

 フィクションの作品において、架空の武器というのは、非常に素晴らしいエッセンスになり得ます。数々の歴史上の武器の中から、新しい武器を夢想する楽しみ、今後の時代劇に僕は大いに期待しています。いや〜、武器って本当にいいもんですね〜。
(文=二木知宏[スクラップロゴス])

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