ミリオタライター二木知宏の「武器で見る映画」第9回

“パロディ”と“リアリティ”のハーモニー! ミリオタが思わず唸る『キングコング:髑髏島の巨神』

kgkg0502.jpg映画『キングコング:髑髏島の巨神』公式サイトより

 武器で見る映画第9回は、怪獣映画の金字塔キングコングの最新作『キングコング:髑髏島の巨神』(原題: Kong: Skull Island 2017)です。キングコングといえば、誰でもそのおおよその姿は想像できると思いますが、キングコングは時代ごとに、あらゆる武器の標的となってきました。そこで今回も、この映画に出てくる武器を紹介していきましょう。

 物語は、第二次世界大戦中、アメリカの航空機「P-51 マスタング」と日本の航空機「零式艦上攻撃機」が墜落するところから始まります。P-51 マスタングは第二次大戦中のアメリカの傑作機で、史上最高のレシプロ戦闘機と呼ばれた代物。レシプロとはレシプロエンジンの略で、エンジンの一種を指します。このマスタングのレシプロエンジンは、マーリンといい、なんと高級車で有名なロールス・ロイス製なのです! すごい運動性能!

 対して、零式艦上攻撃機。零戦といえば、日本人なら一度は聞いたことがあるでしょう。零戦については、ジブリ映画の『風立ちぬ』(2013)とかで詳しく描かれていますが、徹底した軽量化が図られ、高い格闘性能を実現しています。マスタングと零戦というのは、時代のアイコンであり、この機体が出てくれば、つまり、第二次大戦中だとわかるようになっているわけです。

 物語が進んで、1973年、アメリカがベトナム戦争で敗北を喫した後のころ。かたくなに「敗けてない、撤退だ。」と言っていたアメリカ軍の兵士が登場するように、この映画、実に多くのオマージュやパロディ要素が散りばめられています。例えば、島の調査のために使おうと出てきた「サイズミック爆弾」、これは『スターウォーズシリーズ』に登場した「サイズミック・チャージ」という爆弾のオマージュだろうと思います。今回の『キングコング』で、アメリカ軍大佐のプレストン・パッカードを演じたサミュエル・L・ジャクソンが『スターウォーズシリーズ』にも重要な役で出演していることが影響しているのででしょう。

 髑髏島に上陸する面々の武装も時代を反映しています。主な武装はコルト社製「アサルトライフルM16A1」、世界で一番有名なアサルトライフルですね。このM16にM203グレネードランチャーを装着したモデルも登場します。また、スプリングフィールド造兵廠製「M14ライフル」を携えた兵士も登場します。M14は、フルオート射撃もできるので、ほぼアサルトライフルですが、銃床が曲がっており、フルオート射撃時の制御が困難だということが、ベトナム戦争で表面化してしまい、M16に主力小銃の座を奪われるという運命をたどっています。しかし、高い威力と長い射程から、M14をフルオート射撃もできる狙撃銃として運用する兵士も多く、そのため、ベトナム戦争帰りの兵士達がM16やM14を装備しているのは、リアリティー溢れる描写といえます。

 兵士の一人が装備している「カラシニコフAK−47」。アメリカ軍なのに「?」と頭に疑問符が浮かぶ人も多いことでしょう。カラシニコフのAK−47とは、ミハイル・カラシニコフが設計したソ連軍正式採用小銃で、先述したアメリカ軍正式採用M16と世界を二分し、“世界で最も多く使用された小銃”としてギネス記録も持っています。ベトナム戦争でベトコンたちは主にAKを使用していました。では、なぜアメリカ軍が使用しているのか? それは簡単です。AK-47が開発されたのは1947年、正式採用が1949年、対してM16は、1957年開発の1962年から正式採用で、少しだけ新しいんですね。兵器と兵士の関係は面白いもので、古い武器は、それまで使用してきた信頼があります。操作性などは、新しい銃より、今まで使っていた銃の方が習熟度が増していることは明らか。命を預ける非常に大切な道具である銃を容易に新調することはしないんです。正式採用された新しい銃が配備されても、一つ前のモデルを使用している兵士が多い理由がこれです。兵士と兵器っていうのは、常に新しいものを望みながらも、新しいものに対する不信感に溢れている、この矛盾を抱えた存在なんです。話を戻しますね、つまり、採用されて間もないM16は信頼性がまだ低く、敵から奪ったAK-47を使用する兵士が多かったという資料が残っています。このAK-47にまつわる話が映画内でも語られます。それはぜひとも劇場でご覧いただきたい限りです。

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