『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(スクウェア・エニックス)で、名声を得た谷川ニコ氏(2人で1人ですが、ひとまず「氏」呼びで)。その新たな代表作になりそうなのが『ライト姉妹』(KADOKAWA)なのであります(正式タイトルは『ライト姉妹 ~ヒキコモリの妹を小卒で小説家にする姉と無職の姉に小卒で小説家にされるヒキコモリの妹~』)。
『わたモテ』の前に連載していた『ちょく!』(スクウェア・エニックス)以来、谷川氏の持ち味として欠かせないのは、どこか常軌を逸脱した登場人物たち。それが、この作品では加速度的にトンデモないものになっているのです。
物語の中心になるのは2人の姉妹。姉の水樹希美は、会社を辞めてニートになりたての20代。妹の奏愛は中学生のはずなのに、学校にも行かずにゲームばかりしている不登校児。
家からもほとんど出ることがなく、暗黒の未来しかない姉妹が、働かずに生きる方法として考えついたのが小説家なのでした。こうして姉は妹を小説家、それもラノベ作家にするべく奮闘を始めるのです……。
これまでも、ヤバさ漂うダメ少女を描いてきた谷川氏ですが、この作品は今までになくキレキレです。なんといっても、台詞が尖りまくっています。
「私、大人になったらナマポで暮らすの」
「ニートを私ひとりだけにしないで」
などなど、悲惨な台詞の応酬は止まるところを知りません。
そもそも、妹を小説家に……ラノベ作家に……というのも、ほとんど思いつきでしかないのです。
「貧乏な人間がラノベ作家を目指していることを知ったわ……アニメとマンガに詳しいから小説を書けると思ってラノベ作家を目指す人間……ニートで何の才能もないけどラノベを書いてひと山当てて一発逆転を狙う人間」
「きっとラノベ作家はダメな人間たちの憧れの職業なのよ」
半ば事実のような気もしないではありません。以前、某有名ラノベ編集者の講演会に行ったら、質疑応答の大半は「何を書いたら賞がもらえますか」と「今は何を書いたら売れますか」しかなかったから……。
ひたすらクズそのものの姉妹ですが、多少は努力はしています。奏愛のほうは、雨が降ったり、地面が濡れたりしていなければ図書館にはいくようにはなります。
そこで出会うのが、同世代のボクっ娘・環季。この娘、内緒ですが中学生にしてすでにラノベ作家としてデビュー済み。そうとは知らない奏愛は、本人の前で本人の作品をけなします。
「この作者は30代以上のニートのおっさんだと思ってるんだ」
「女のコのパンツをショーツって書くなんて完全におっさんだよ、気持ち悪いもん」
なんで、ここまで刺さるような言葉を紡ぐことができるのか。谷川氏の才能に嫉妬してしまいつつも、期待の作品であることは間違いなさそうです。
(文=大居候)
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