『Fate/Apocrypha』から学ぶ! 一番わかりやすい『FGO』原典紹介(中編)

■黒のバーサーカー:フランケンシュタイン(小説)

 フランケンシュタインと言えば、大抵の場合「身体にボルトが刺さり、ツギハギだらけの顔をした、頭が弱い代わりに怪力を持つ大男」という特徴で、昨今さまざまな創作作品に登場している、日本でも馴染み深いキャラクターと言えるでしょう。

 ですが、原典となる小説『フランケンシュタイン』(日本出版協同)において、この怪物はそれら創作作品とは全く異なる存在であり、そもそも「フランケンシュタイン」という名前ですらないのです。

『Fate/Apocrypha』から学ぶ! 一番わかりやすい『FGO』原典紹介(中編)の画像3Wikipedia Commonsより。1931年の映画に登場する「フランケンシュタインの怪物」

・フランケンシュタインという名の大学生が造った怪物

 まずこの怪物は、自然科学を学んでいた「ヴィクター・フランケンシュタイン」という大学生が、生命の謎を解き明かし自分自身で生命体を作り出そうと考え、「材料は納骨堂や屠殺場、解剖室からかき集めた」「手足はつりあいがとれ、顔つきは美しいものを選んでおいたのだ」という記述から、おそらく死体を組み合わせて作った肉体に生命が吹き込まれた人造人間です。

 ヴィクターはこれに名前を付けておらず、作中では「怪物」「被造物」「鬼」「悪魔」などの一般名詞でしか呼ばれていません。また外見は非常に醜い、とされていますが、作中にその具体的な描写はありません。また身体能力と知性は非常に高く、自己の存在や孤独に悩む繊細な心を持っており、言葉を発しての人間との対話や怪物自身の独白シーンも数多く見られます。

 フランケンシュタインを元ネタとした作品にしばしば見られる「結合した死体に高圧電流を流すことで怪物は生命を得る」「面長で平らな頭部に広くせり出した額」「首や頭にボルトが刺さっている」「知性は低く、非常に凶暴」という設定や外見は、1931年の映画『フランケンシュタイン』ではじめて描かれたものです。この映画が大ヒットしたことによって、「この外見を持つ怪物の名前はフランケンシュタインなのだ」という、原典にはない要素が誤解されたまま広まってしまった、と考えられています。

・親を求める怪物と、育児放棄をした生みの親

 小説『フランケンシュタイン』では生命を得た怪物の醜さに恐れをなし、ヴィクターは怪物を捨てて逃げ出してしまいます。怪物は森の中で生活しながら、火の使い方や食べ物の調理方法など、生きる術を独学で身に付けていきます。やがては言葉も扱えるほどとなり、拾った書物なども読み、知識を付け思考能力をどんどん高めていきます。

 ですがそのあまりの醜さに、出会う人間は誰もが怪物を忌み嫌い、迫害します。さまざまに思い悩みながら、やがて生みの親ヴィクターの元へやってきた怪物は、「これさえ叶えてくれれば二度と人間の前には現れない」と、自身の伴侶となる女の怪物を造ってくれるよう頼みますが、ヴィクターはこれを拒否します。これに絶望した怪物は、ヴィクターの友人や妻を次々と殺害していきます。ヴィクターはこれに怒り、復讐を果たすべく怪物を追跡するうちに北極海にて行く手を阻まれ、行き倒れているところを北極探検の船に発見されるのです。

 小説『フランケンシュタイン』は、普通のホラー作品としても楽しく読めます。ですがこの作品は、少し視点を変えるだけで「生みの親(創造主)に名前さえもらえず捨てられたが、それでも必死で生き延び、学び、自己の存在に悩みながら、親の愛を求め続けた怪物の物語」としても読み進められるのです。

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