『魔王の秘書』「強い魔物は勇者の故郷に直行で」最強の無理ゲーを作りだす秘書が素晴らしい

2017.05.07

「コミックアース・スター」(アース・スター エンターテイメント)で連載中のマンガ『魔王の秘書』(作:鴨鍋かもつ/泰文堂)の第1巻が4月12日に発売されました。RPGの“あるある”的なツッコミポイントを上手に笑いへと昇華した、ゲーマーにとってはかなりツボなギャグマンガとなっています。

 舞台はよくありそうなファンタジー世界。物語は300年の眠りから魔王が目覚めるところからスタートします。世界征服をたくらむ魔王は、敵である人間を倒すには人間のことをよく知っている人間自身こそ適任と判断、知能が高い人間を攫って自分の元で働かせようとします。そこで部下が連行してきたのが、とある先進国で国王の秘書を務めている、綺麗な女性(メガネっ子)でした。

 ところがこの女性の様子がおかしい。魔王を見てもまったくひるまず、人間を滅ぼす手伝いをさせられることにも何一つ抵抗せず、むしろ「頑張って世界から人間を根絶やしにしましょう!!(私以外の)」とまで言い出す始末。この女性は別に人間に深い恨みがあるとかそういう訳ではなく、与えられた仕事は機械のように完璧にこなすという性質のようなのです。そして魔王はこの女性を奴隷として働かせるつもりでしたが、「秘書の方が能力を発揮できてお役に立てるので」と押し切られて自分の秘書にすることに。ちゃんと雇用契約も結んで“魔王の秘書”が誕生したのでした。

 さてここから魔王の秘書となったこの女性が、RPGのお約束にガンガンメスを入れていきます。まずは勇者の冒険出発地点近辺のモンスターはレベルが低く、冒険の進行度に合わせて徐々に相手が強くなっていって、とても勇者に都合が良い問題。

 はるか昔から散々ネタにされていますが、魔王軍の言い分では、力のある魔物は魔王城周辺を固めているため、雑魚にその辺で人間の相手をしてもらっているからというもの。しかし秘書は「レベルの高い方(魔物)は勇者の故郷に直行」「蘇生手段を断つために神官や僧侶も順に手にかけましょう」と容赦ない提案。これはすさまじい無理ゲーが誕生しそうです。

 次は、勇者たちは全滅した時に所持金の半分が無くなる問題。魔王軍の言い分では、半分だけしか所持金を奪わないことで、魔物の余裕をみせる作戦ということらしいですが、秘書は「今後は身ぐるみ全て剥いでください」とまたもや容赦ない提案。
 
 他にも正々堂々と世界征服をたくらむ魔王軍に、人間の農業地帯に疫病をばらまいて飢餓に追い込もうと提案したり、先脳した人間や病原菌を持たせた人間を街に送り込んで、内部崩壊や集団感染を起こさせようと提案したり、変身能力のある魔物に人間界でアイドルをやらせて、人間を先脳して資金を奪おうと提案。こんな感じで秘書は最強の作戦を企てていくのです。

 RPGをプレイしたことがある人ならば、誰でも思ったことがある「魔王軍バカすぎる問題」。「自分が魔王だったらもっとこうして人間を上手に根絶やしにするのに!」と妄想したことがある人にとっては、『魔王の秘書』はかゆいところを全てかいていってくれる作品になっているかもしれません。RPGゲーマーには、是非このマンガを一読していただきたいです。
(文・白子しろこ)

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