『エロマンガ先生』4話「兄貴ってのは、妹でエッチなことを考えたりはしない!」そうです

――ようやく『エロマンガ先生』ってタイトルにも、皆さん慣れてきたんじゃないでしょうか。でもそれ、感覚がマヒしてるだけなので要注意。電車の中で『エロマンガ先生』(TOKYO MXほか)のことで会話していると、周りにギョッとされます(体験済み)。業界ものラブコメの『エロマンガ先生』(公式サイト)の全話レビュー、今週もかーずSPがお届けします。 *ここまでのレビュー

『エロマンガ先生』4話「兄貴ってのは、妹でエッチなことを考えたりはしない!」そうですの画像1『エロマンガ先生』公式サイトより

■紗霧、目立たないけど暴力系ヒロイン


 そんな危険ワード「エロマンガ先生」とは、イラストレーター・和泉紗霧(いずみ さぎり/演:藤田茜)のペンネーム。紗霧の兄・高校生ラノベ作家の和泉正宗(いずみ まさむね/演:松岡禎丞)は、売れっ子作家の山田エルフ(やまだ エルフ)/演:高橋未奈美)とどっちが面白い小説を書けるのか対決することになりました。勝った方は次回作の挿絵をエロマンガ先生に描いてもらえるという取り決め。紗霧本人のあずかり知らぬところで、ガチンコの大勝負が始まろうとしています。

……のはずなのに、正宗に料理を振る舞っていて、ちっとも書こうとする素振りがありません。

「あんたのおかげで料理を振る舞うヒロインの気持ちがよくわかったわ。」

 先週、「小説を書くのは遊びでやっている」と豪語した答えがこれ。手間のかかる手料理を作ってでも、リアリティを求める作家の姿がここにあります。今までずっと、正宗の担当編集に駄々こねるわ、全裸でピアノ弾いてるわ、ゲームばっかりしてるわ、色々とアレな言動ばかりだった山田エルフ。ただの残念なイタい子じゃなかったんですね。
でもエルフの実践的な仕事の姿勢って、紗霧と同じタイプなんですよ。


「お前ってなんで貧乳の子しか描けないの?」

「エッチな絵にはこだわりがあるから! 生で見たことないものは描きたくない!」

 じゃあこないだのお尻を突き出しているイラストも、実際にキワドいパンツを穿いて紗霧がポーズをとっているんじゃ……ゴクリ。

 そんな妄想をしていたのでポカポカ殴られる正宗。紗霧ってダウナー系なのであまり強調されてないんですが、最近減ってきた暴力系ヒロインの系譜でもあるんですよね。『シティハンター』の槇村香は100トンハンマー。『うる星やつら』のラムは電撃。『ニセコイ』の桐崎千棘は拳。紗霧の武器はゲーム機のコントローラーや、今回はペンタブレットの角でした。それマジで涙が出るほど痛いやつじゃん。

「兄貴ってのは、妹でエッチなことを考えたりはしない! お前がどんなにエロいやつでも、エッチな気分になったりしないし、なにより絶対にバカにしたりしない! それが兄貴ってもんだ」

 正宗さんマジかっけぇ。でも単語的には色々とヒドい。
 紗霧は笑顔を浮かべるんですが、よく見ると眉毛が下がっていて憂いの表情も含まれてます。家族として、全幅の信頼を置いてくれていることへの安心感や感謝の笑顔。でも憂いの意味は……正宗と「兄さん」以外の関係にはなれないことを突きつけられてしまったから。正宗ってばホント、ラノベ主人公!

■300ページのラブレターは


 いよいよ山田エルフとの小説対決。正宗がエルフの新作を素直に面白がる一方で、エルフは歯ぎしりしながら怒り心頭。顔真っ赤にして原稿を丸めて叩きまくるわ、床に転がりまわるわ。やっぱり残念なイタい子でした!

「この原稿は、たくさんの読者を楽しませるために書いたものじゃない。アンタはこれを魂込めて、たった一人のためだけに書いたんでしょ!」

 正宗の原稿は世界でただ一人、紗霧の心を揺さぶるだけに書かれた、小説に見せかけた熱烈なラブレターでした。今回は面白いか、売れるかではなく、エロマンガ先生を口説くための小説対決。だから軍配は正宗の勝利に終わりました。

 長文ラブレターと言えば、去年放送されていた『舟を編む』第5話でも、馬締光也(まじめ みつや)が漢詩を含んだ15枚にもなる恋文を送っていました。正宗は300ページ。はたして読み終えた紗霧は……。

「わたし、好きな人がいるの」

 いやー振られちゃいました。ショックを受ける正宗。最初に出会った瞬間から、正宗は紗霧を一人の女の子として惚れています。じゃあなんで「妹でエッチなことを考えたりはしない!」と断言していたのでしょうか。正宗は、紗霧が欲しがっていた「家族」になろうとしていたから。自分の心に蓋をして、恋心をひた隠しにして、嘘をついていたんですね。ちぐはぐな想いと言動で、紗霧も正宗本人も振り回されてしまいます。

■全部盛りの第4話


 気を取り直した正宗は、この原稿を本にすることを誓います。売れて、アニメ化して、紗霧と二人でアニメを観ることが目標だと。紗霧がヘッドセットマイク越しに、実況モードの声で応える。

「いいぜ和泉先生。やってやろうじゃん。そんな面白そうなコト、ひとりでやらせてたまるかよ。それはあなただけの夢じゃない───オレたち二人の夢にしよう」

 エロマンガ先生、マジかっけぇ。この第4話は正宗と紗霧の恋愛、兄と妹の家族愛、ラノベ作家とイラストレーターの友情、ラノベ作家同士の熱い戦いから構成されています。すなわちラブコメ、ホームドラマ、業界もの、バトルものがすべて綺麗に収まっていて、『エロマンガ先生』の真骨頂と言えるエピソードに仕上がっています。次回から新章の始まりですよ。

(文/かーずSP

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