「『実写でやればいいじゃん!』と言われたい」!? 今期“最ムズキュン”アニメ『月がきれい』南健PDインタビュー

―― この企画の話を岸監督にされたときのリアクションはいかがでしたか?

 お互いにニヤッと笑って、「やったろか」という感じでしたね。(笑)。ヒット原作のアニメ化を……という話ではないので、彼にとっては怪しくも意欲的なオファーだったと思います。視聴者の皆さんも、岸誠二という監督が中学生同士のピュアな恋愛ものを作るとはまさか思わないでしょう。それをやることに面白みがあると思います。

―― そもそも、南さんが「リアルな人間のドラマ」をアニメにしたいと思ったのはなぜでしょう?

 SFやファンタジーといった画面を派手にする要素や、アイドルなどの特殊職業や難病のような物語を派手にする要素はないけれど、しみじみと感動できるようなフィルムの存在価値がそろそろ出てくるんじゃないかと思ったんです。中でも10代のラブロマンスって、もともと小説や漫画、実写のドラマや映画といったメディアでは綿々と取り上げられ続けてきた題材じゃないですか。アニメでも、14年時点から見て2年後ぐらいには当たるようになるんじゃないかという予感がしていました。TVアニメでも『僕等がいた』(06年)や『君に届け』(09ー~10年、11年)、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(11年)、『一週間フレンズ』(14年)などの作品が受け入れられていましたし。

―― 前提になるアニメの文脈を共有していなくても、すぐに入っていけるアニメですね。

南 そうです。世界観やキャラクター造形に関して、現実離れした特殊な設定を理解する必要がない。特に深夜アニメが先鋭化させてきたような前提知識がない人でも入りやすいですし、ずっとアニメを見てきた人も面白さを発見できる作品になりつつあるという自負はあります。誰でも楽しめますし、誰でも胸が痛くなるアニメとして完成してほしいですね。

1704_sora01.jpg中学3年生、という時期が大切

■アニメで『中学生日記』をやろう!

―― 設定やストーリーはどのように詰めていったのですか?

 1年かけてキャラクターの年齢、話の方向性、舞台になる場所などを決めていきました。中学生の話にしたのは、まず我々も親世代なので、小学生の恋愛はご遠慮願いたかった(笑)。一方、高校生の恋愛を描いた作品はすでにいっぱいある。

 いろいろ調べたのですが、ものの本によると高校時代が「青春」で中学時代は「思春期」なんだそうです。青春時代は、バイトができたり、知恵がついたりと、けっこう選択肢が多くて、行動の自由がある。思春期は、自分に能力がなかったり、学校や家といった枷があったり、そもそも自分が何をしたいのかボンヤリとしかわかっていなかったりする。そうやって悶々と悩んでいる子を描く方が楽しそうだと思って、中学生に決めました。

―― 不自由だから中学生を選んだわけですね。

 そうです。中学3年生は大人の階段の一段目が見えたぐらい。子どもと言われると怒るけど、大人にはまだまだ遠い。また、人によってその進み具合にかなり差があるんです。それがいいんですよね。

 あと、高校は受験というフィルターを経て(学力が)同じぐらいのレベルの子たちが集まってきますが、中学は公立だと近くに住んでいるいろいろな子たちが集まっているんです。アニメで背景の子たちを描くときは均質化されていたほうが楽ですが(笑)。でも、それはつまらない。社会的な生き物としての人間の差が一番色濃く出るのが中学なんです。

―― そのあたりが『月がきれい』で描きたかったところですか?

 そうですね。個人差が大切だと思っています。恋愛を描くのですが、結局、恋愛も生活の一部なんです。だから、「中学生を描く」という形に落ち着けばいいですね。「アニメで『中学生日記』をやる」というのが僕らの標語の一つです(笑)。

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