『月がきれい』4話 リアルな恋愛がはじまると、文学や太宰治はどこかへ行ってしまう中学生男子

■ベタすぎることはやらないスタッフの心意気

 LINEを送ったのも束の間、小太郎のスマホは教師に見つかって没収! 細かな打ち合わせができないまま、茜は友人たちに連れられて出て行ってしまい、小太郎も友人たちと行動をともにする。これって、大人になってもたまにある。友人との付き合いを断り切れず、恋人(あるいは夫、妻)との約束にずるずると遅れてしまう……。バシッと言える人は言えるだろうし、何歳になっても言えない人は言えないのだ。

 スマホがないので連絡がとれず、すれ違ってしまう描写は非常にリアル。公衆電話から連絡しようという発想もなく、それどころか小太郎は茜の電話番号さえ知らない。ただ、それ以前に小太郎は友人たちを振り切って出てこれなかったようで、待ち合わせに明らかに遅刻している。これは初デート(?)には痛い。

 でも、ここで小太郎はあきらめない。ズブ濡れになりながら、千夏(演:村川梨衣)を見つけて、思い切って茜に連絡を取るように頼むのだ。ここでもまた思い切ったぞ、小太郎。そこに至るまで、千夏と小太郎の接点を幾度となく作っておいた脚本の細かさがニクい。ちょくちょく話すような間柄じゃないと、こんなことは頼めないわけだから。

 なんとか連絡が取れたけど、茜はブンむくれ。小太郎が待ち合わせに遅刻したこと、何も知らない場所でひとりきりにされた心細さ、楽しい修学旅行なのに「待つ」だけというつまらなさ……茜はいろいろな感情がないまぜになっていただろうけど、千夏と親しげに話していた小太郎を見て、自分の気持ちにはっきりと気付いたようだ。

「もっと、しゃべりたい。安曇くんと……」
「それって……返事」
「うん……」

 自分の気持ちに素直になれれば、大切なものをこぼさずに掴むことができる。茜はきっと素直な子なんだろうなぁ。そして通り雨はあがって青空が見えた。典型的な「雨降って地固まる」だけど、ラストでうかつに虹とか出しちゃわないところにスタッフの心意気を見た。こういうモジモジするドラマは演出がベタすぎると辛くなる。最後の茜の「うん……」という返事の音も、なんとも言えない響きだった。
(文/大山くまお

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