【劇場アニメレビュー】劇場舞台挨拶は写真撮影もOK!? 京アニらしい丁寧な作りが光る『劇場版 Free!-Timeless Medley-絆』

 そう、今回の作品のファン・サービス短編は、いわば“舞台挨拶”であり、決められた時間内の写真撮影が自由という前代未聞の試みだったのである。しかもこの短編、週替わりで計4本はあるそうで、つまりキャラを替えての舞台挨拶を目当てに4週間、ファンのみなさまは劇場に通うお楽しみができたというわけだ。

 アニメ映画通例でもある週替わりグッズ配布サービスの転売問題なども時折聞く昨今、これに関してはもう絶対に映画を見ないと体感できないものだけに、その点ではユニークな趣向といえよう。

 ただし写真撮影タイムが終わっても、このまま映画泥棒し始める子がいるのでは? と少し不安に思ったが、やはりアニメ・ファンはマナーがいい。さすがに撮影タイムが終わって割かしすぐに本編が始まったので、若干電源を切るのに戸惑っている子は結構見受けられたが(このあたりは製作サイドも今後の課題かなとも思う)、しばらくするともうみんな一斉に画面に集中し、以後はほとんど物音も立たないほどの集中モード。

 ただし、笑える場面や泣ける場面では、みんなちゃんと素直に反応してくれるので、結果としてはすこぶる心地の良いライヴ感覚の映画観賞を堪能できたのであった(いや、一瞬でも乙女のみなさんを疑ってしまってすみません。他の劇場もみんなこうあってくれるといいなと願う次第)。

 と、ほとんど映画のことを記していないので、一応紹介しておくと、本作は高校生男子水泳部に所属する面々の青春群像を描いたTVアニメーション『Free!』シリーズ(第1期13年7~9月、第2期14年7~9月)の中から、第2期『Free!-Eternal Summer-』後半を基に再構築したもの。いわゆる総集編映画ではあるのだが、そこはそれ、制作が京都アニメーションなだけに、大本の出来が良ければダイジェストもそこそこ面白いという道理に背くことのない、というか実にうまい構成で映画そのものとしてのダイナミズムを堪能できる快作に仕上がっている。

 今回の構成のポイントとなるのは、岩鳶高校3年生となった主人公の七瀬遙、通称ハルと、その親友・橘真琴、通称マコとの友情の絆で、幼い頃からの両者の交流はどことなく恋人同士のようにも映え、特に終始クールを装うハルに接するマコの姿勢は、どことなく筋肉をまとった女子のようにも映え(かといって絶対にあちらの世界へ行くことがないのが、本作の美徳ともいえるだろう)、その不可思議な関係性がプールの水の美しい描出などとも呼応して、男の子の思春期そのもののみずみずしさを醸し出している。

 また、後半はハルのライバルでもある松岡凛、通称リンとの交流に多くを割くことで、小学校6年生のときの水泳仲間たちに絞った麗しき友情劇までも心地よく浮かび上がっていく。

 もちろんその分、他のキャラクターがおざなりになった部分は総集編映画として致し方ないところだが、そこをつつくのは野暮というもの。むしろ、いつもながらに安定したレベル以上のものを供給し続ける『Free!』および、京都アニメーションの実力に瞠目すべきであろう。

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