あくまでAV出演強要ではありません、自己決定権です!! オクショウ『バックステージ!』

 果たして、アイドルという商売で1億5,000万円を稼ぐことができるのか。むしろ、そんなに稼いでるアイドルになんて興味はわきません。フジテレビ系『ザ・ノンフィクション』で放映された超名作「アイドルすかんぴん」を「録画しておいてよかった~」と、今でも時々観賞している筆者は、そう思います。

『バックステージ!』(原作:オクショウ、作画:ニイマルユウ/徳間書店)は、アイドルが「我が身のため」に1億5,000万円を稼ごうという物語です。日々、1円の金も出し惜しむ筆者にとっては1億5,000万円という金額が、どれくらいなものかわかりません。そもそも、出版業界に身を置いて見たことのあるもっとも大きい金額は、書籍の制作費(印刷費含めて諸々)ですから、数百万円程度。いったい、書籍が何冊出版できる金額なのでしょうか?

 物語のヒロインは、4人組のアイドルグループ「マイルストーン(通称:マイスト)」と、女性マネジャーの5人。デビュー以来3年間、まったく芽の出なかったこのアイドルグループは、事務所も倒産。それをマネジャーごと拾ってくれたプロダクションは、AVメーカーのフロントだったのです。

 スタイリッシュな悪党風の社長・鬼頭は、AV出演、あるいは、契約書通りにマネジャー含めて5人分×3,000万円の違約金を支払うかと迫ります。

 もちろん払えないことを承知の上で、メンバーが18歳になった時点でAVデビュー。ついでに、マネジャーもAVデビューさせるという戦略です。裏社会との繋がりも匂わせて、追い込みをかける鬼頭ですが、あくまで最近流行の出演強要ではなく、契約です。

 こうして、メンバー全員が18歳になる1年後までに、AV出演を拒否するべく東京ドームを満席にするのが、この作品のミッションです。

 そして、この作品の特徴は妙に善人の揃った不思議な世界感です。

 ひとまず、1年後に東京ドームを満席にできなかったらAVデビューすることを宣言するために記者会見が開かれます。ここで、集まった報道陣のセリフ。

「ウソだろう……」
「アイドルがまるごと?」

 わかるでしょうか。そもそも、売れてないアイドルがAVにシフトするのは、もはやありがちな出来事。これ自体が、AVのプロモーションとしか思わないですよね?

 こんな記者会見を開いたら、スポーツ紙とか、姉妹サイト「日刊サイゾー」のライターが、こぞって「好きな体位は?」「処女ですか?」とか、刺すような質問を次々とぶつけるに違いありません。

 かくして、色々あってマイストのメンバーたちは、表舞台から姿を消していた敏腕プロデューサー・三間坂に自分たちのプロデュースを依頼します。

 この男、かつて自分が紅白出場まで手がけたアイドルを鬼頭の手によってAVデビューさせられたという過去の持ち主。10年前、マネジメント業務を引き受けさせてもらえないかと近づいてきた鬼頭によって、密かにアイドルを口説かれていたというのです。その怒りを原動力に、三間坂は再び芸能界へ復帰を決意するのですが、まったくよい話とは思えません。それは、お前の管理能力が皆無だっただけだろう、と。

 そんなどうしようもなさが、この作品を魅力的なものにしています。どうせ最後は「アイドル最高!」みたいなハッピーエンドになるんでしょう。でも、やっぱり読みたいのは、カタルシスを得られるバッドエンドですよね。

 いっそ、田舎の両親が田畑を売って、金を積んで契約破棄みたいなエンドはどうでしょう。
(文=大居候)

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