ミリオタライター・二木知宏の「武器で見る映画」第8回

アサシンブレードは存在しなかった? 『アサシンクリード』で学ぶ“武器と暗殺の歴史”

 さて、15世紀当時のヨーロッパで使われていた武器を紹介しましょう。基本的装備はロングソードです。一般的な両手持ちの両刃の剣で、本作でも多くの兵士がたくさん使っています。ドイツだとツヴァイハンダー、スイスだとバスタードソード、スコットランドだとクレイモアって名前です。これらの名前は、テレビゲームなんかでもよく耳にすると思います。1〜1.5mの長い刀身と2〜4kgの重量で、ピンとこないかもしれないですが、江戸時代の日本刀、打刀は刀身70cmくらいで重さ1kg程度。その打刀を日本人は両手持ちでチャンバラしているので、江戸時代の日本人くらいの体格や体力と西洋人のそれとでは、これだけ違ったわけです。もっともこの打刀が主流になったのは近世で、刀で戦争していた中世の鎌倉から安土桃山までの日本刀、太刀はもっとでかい。

 なぜ、日本の話を急にしたかといえば、日本刀と西洋の剣は比較しやすいんです。ロングソードは、斬れ味なんてあってないようなもの。というのも、西洋の甲冑は、ご想像の通り板金鎧と呼ばれるプレートアーマー。さらに、その下に鎖帷子を着込んでいたので、どれだけ斬れ味を鍛えても斬れないんです。ロングソードは斬るのではなく、叩き折る、あるいは殴る鈍器として使用されていました。斬れ味抜群の日本刀に対して、こちらは打撃武器なんです。

 アサシンの戦い方は、実は対プレートアーマー戦でした。大きな剣で打ち合い、アーマーの隙間にダガーなどのナイフを刺して致命傷を与える、という戦法。実は、こちらの方がアーマーの上から打撃を与えて倒すより、はるかに効率的なんです。

 次に多く登場したのがクロスボウ。引き金を引くことで、矢を発射するギミックを有する武器で、漢字では弩(ど)という表記になります。日本では「おおゆみ」「いしゆみ」って呼んでいました。ボウガンって言った方がわかりやすいかと思います。鉄製のクロスボウは1370年頃に歴史に登場します。従来の弓に比べて貫通力や飛距離に優れ、何よりの利点は片手で発射できること、素人でも標的に命中できることが最大の特長。中世に発明された革命的な武器と呼ぶ人が多いのもわかります。しかし、機構が複雑で故障が多いこと、連射が難しいことが欠点でした。

 悲しいかな、人間の歴史とは戦いの歴史。僕らの先祖である猿人類が道具を使い出した瞬間から、武器は存在し、狩猟に使い、戦争に使い、社会の発展に貢献してきました。今僕らが普通に生きていて、「戦争や武器なんか関係ないやい!」って思っていても、知らずに武器の発展の恩恵を享受しているわけです。だから、武器に興味なくても、関係ない人なんていないんです。いや〜、武器って、本当にいいもんですね〜。
(文=二木知宏[スクラップロゴス])

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