話題作『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』永田カビ氏が赤裸々に綴るエッセイコミック『一人交換日記』レビュー

 pixivで話題となり、昨年の夏に単行本で発売された『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)で「このマンガがすごい!2017」オンナ編(宝島社)で第3位となった永田カビ氏。しかしガラスのハートを持ち、高校卒業から10年間、息苦しく生きづらい日々を過ごしてきた永田氏は、いまだに辛さを背負っている様子。

 そんな今の自分と、過去の自分でやりとりするという手法によって、親との確執や一人暮らし、愛情などが、さらに赤裸々に描かれているのが『一人交換日記』(小学館)です。皮肉にも『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』によって仕事が入ってきた永田氏の“その後”は、やはりまだ辛く寂しいようです。

 初めての一人暮らしをしてみたものの、「すごく贅沢な虚無」を感じて再び実家暮らしになる永田氏。家族とも心から打ち解けられない辛さに、心身ともに寒く冷えてしまいました。そして再びレズ風俗のお姉さんのお世話になり、とにかく「ぎゅーっと」してもらうことで寒さを回避。しかしその効果は一時的なもので、「一人のほうがさびしくない。実家は孤独」という結論に至ります。心ない言葉を父親の口から聞かされたシーンで思わず泣きたくなるなら、多分読者も家庭内での孤独を感じているのかも知れません。

 本作では、主に母親との関係が多く描かれていますが、「あー、わかるー」と感じる場面が結構あります。さらに「自分の幸せを得るためには、母親を捨てること」という図式が頭の中に浮かびあがってしまう永田氏。葛藤して、躊躇して、好きになったり嫌になったり。母親が憎いわけではなく、ただ「愛されたい」だけなのに、自分を認めて欲しいだけなのに……。いくら関係がうまくいっていなくても、やはり子供は母親を愛してしまうのでしょう。永田氏の心ではなかなかうまく事を運べません。自分の描いたマンガが掲載されているものを、見せたいけれど見せられない、何と評価されるのか怖い、否定されたらどうしよう──そんなマイナス思考が離れないことに、「あー、わかるー」と共感する同人作家さんもネット上で多く散見されました。

 やがて永田氏は、自分が「愛し愛されたい」のだということに気付きます。アラサーで一人暮らし、彼氏なし、処女……そんな彼女は、人の温もりを求めるのです。普通なら、友人や恋人、職場の人や家族など、さまざまな人間関係を築いて自立するのですが、永田氏はそのすべての役割を母親でまかなっていたことを実感しました。

 しかしそこに突然降ってわいた愛情! 永田氏に「交際を前提にお友達になってください」と言って、溢れんばかりの愛情を与えてくれる女性が現れたのです。「自分のことを好きな人」と接すれば、心が満たされると思っていた永田氏でしたが、結局は自分が相手を尊重していない限りは、どれだけ愛されても寂しいのだと痛感。その人とは何度か会いましたが、結局付かず離れずのようになってしまいました。

 もう、すごく寂しいですし、哀しいです。抱き締めて欲しい、愛して欲しい、そう思っていても、自分が人を思えず傷付けていたら、幸せになどなれないのだと理解した永田氏。せっかく自分を愛してくれる人がいても、自分が同じくらい相手を好きになれなければ「幸せ」とは言えないのです。

“自分との交換日記”の体をなしているものの、永田氏の感じたことや人生への取り組み方、愛とは何かなど、かなり突っ込んだ内容のエッセイコミックになっています。これを読んで、理解できない人も多いかも知れませんが、共感する読者も同じくらいいるはず。自分の物差しを持つことの重要さや、目の前に置かれた幸せに手を伸ばせない自信のなさなど、永田氏ならではの視点と思考で描かれていますが、なんだか他人事とは思えないのは私だけでしょうか……?
(文/桜木尚矢)

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