■赤裸々に語られた『響』連載までの経緯
今回のプレゼンターを務めたのは、昨年大賞を獲得した『ゴールデンカムイ』担当編集者・大熊八甲氏。ノーネクタイのスーツ姿で登壇した柳本氏は、選考委員たちによって手作りされたプライズを大熊氏から受け取った(本人が撮影NGのため、掲載写真の左側は担当編集者である待永倫氏)。
エキセントリックな作風に比べ、どこか純朴でおとなしげな雰囲気を漂わせる柳本氏。しかし記録用に撮影していた小学館のカメラに向かって満面の笑みでピースサインを出すなど(写真撮影NGなのに)、いきなりお茶目なところを報道陣に見せてくれた。
司会者から受賞の感想を問われると「とにかくうれしい」と語り、続いて「ようやく(受賞が)本当だったんだな」と実感したことを加えた。大賞決定を知らされた時はその事実が信じられず、嘘ではないか、ドッキリ企画じゃないか、何度も編集者に呆れられるほど確認したという。
また、歴代の受賞者には珍しく、春めいた晴れ着に身を包んだ美人アシスタントも授賞式会場に同行。受賞の連絡が届いた直後、このアシスタントさんから「先生、マンガは絵じゃないってことが証明されましたね!」と身も蓋もないコメントを投げつけられたそうだ。
会場内をひとしきり笑わせた後は、デビューから『響』連載までの紆余曲折が語られた。
実は柳本氏、新人賞などを一度も獲らず、ここまで上りつめたマンガ家である。もともとは同人作家をしており、スクウェア・エニックスから声がかかって商業デビューした。同社で読切りを描き、反響も上々。その後に連載の話まで出たらしい。ではなぜスクエニで描き続けず、双葉社、小学館と移っていったのか? その事情が明かされた。
本格的な連載をする前に“1巻で終わる短期集中連載マンガ”を描きたいと熱望した柳本氏。しかしスクエニ側からは「そんなものは要らない」「あなたの自己満足のためにページは割けません」と拒否され、追い出された(本人談)そうだ。
スクエニから追い出されたところに双葉社からオファーがあり、短期集中連載されたのが『女の子が死ぬ話』。タイトルがド直球なのでご存じの人もいるだろう。一度読んだら二度と忘れられない、衝撃的ストーリーの作品である。
この『女の子が死ぬ話』を読み、ただならぬ才能に惚れ込んだのが『響~小説家になる方法~』の初代担当編集者(登壇した、現在の待永氏は2代目)。こうして柳本氏は小学館に口説き落とされ、今回のマンガ大賞獲得につながっていったのである。
「これは話していいのかなぁ」と迷いながら結局すべて暴露してしまうフリーダムトーク、場違い感すらおぼえる和服美人アシスタントの存在、デビューから連載までのドラマチックな展開など、前半部分だけでも見どころ満載な授賞式となった。
作者がフリーダム過ぎる! マンガ大賞2017『響~小説家になる方法~』授賞式レポートのページです。おたぽるは、マンガ&ラノベ、出版業界事情、小学館、マンガ大賞、柳本光晴、浜田六郎、響~小説家になる方法~の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!
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