『シン・ゴジラ』とネガポジの関係にある特撮映画とは? バカ映画の巨匠が語る“怪獣愛”、そして“家族愛”!

──『シン・ゴジラ』の7月29日公開に先駆けて、7月16日に公開した『大怪獣モノ』ですが、劇場公開はやっぱりダメでしたか。あっさり認めるところも河崎監督らしい。

河崎 劇場公開はね、ちょっとしたタイミングで変わってくるんで難しいですよ。樋口監督の『日本沈没』(06年)のときは、僕は『日本以外全部沈没』(06年)を公開して、これは大ヒットしました。『日本沈没』が7月公開だったのに対して、『日本以外全部沈没』は9月に公開したんだけど、逆に少し後のタイミングだったことが良かったみたいだね。『大怪獣モノ』は『シン・ゴジラ』の2週間前に公開したんだけど、『シン・ゴジラ』の大ヒットフィーバーがすごすぎて、埋もれちゃいましたね(苦笑)。『ゴジラ』に対抗して『コチラ』という題名にしようかというアイデアもあったんです。アチラを立てれば、コチラは立たずというキャッチコピーでね。これは「シャレを理解しない人もいるから」と忠告をうけて止めました。松竹系で『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』(08年)も撮ったけど、これは僕の映画の中で最大の製作費だったけれど思ったほどヒットしませんでしたね。一般の人はゴジラ以外の怪獣にはまったく興味がないことがよく分かりました。

■成功した作家はみんな変態だった!!

──『大怪獣モノ』はゴジラのパロディというよりは、『フランケンシュタイン対地底怪獣』(65年)のオマージュ作ですよね。

河崎 『ゴジラ』(54年)と『ウルトラマン』(66~67年)との狭間に作られたのが『フランケンシュタイン対地底怪獣』と『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(66年)なんです。ウルトラマンが登場するまでは、怪獣と戦っていたのは巨大化した人間でした。つまり、ゴジラとウルトラマンとのミッシングリンクに当たる作品なんです。それをね、僕なりにリメイクしたのが『大怪獣モノ』。もしもウルトラマンが地球にやって来なかったら……という一種のパラレルワールドです。それで、どうせなら格闘能力の高いプロレスラーを怪獣と戦わせようと、飯伏幸太選手をキャスティングしたんです。飯伏選手のいいパンチがヒットして、怪獣の中のスーツアクターは本当にノックアウトされた状態でした。怪獣をあそこまでボコボコにするのは、テレビじゃできないですよ。今の地上波テレビはコンプライアンスでうるさいから。

『シン・ゴジラ』とネガポジの関係にある特撮映画とは? バカ映画の巨匠が語る怪獣愛、そして家族愛!の画像3これが問題の注射シーン。公衆の面前での、いきなりの人体実験は果たして成功するのか!?

──怪獣と巨人がストリートファイトを繰り広げる『ウルトラファイト』(70~71年)を思わせます。

河崎 樋口監督は初代ウルトラマンをリアルタイムでは観てなくて、ウルトラマンやウルトラセブンの対決シーンだけを再編集した『ウルトラファイト』世代なんですよ。『~ファイト』は我々の大好物です。巨人が戦うという設定は、米国のAIP映画で『戦慄!プルトニウム人間』(57年)と続編『巨人獣』(58年)があったし、手塚治虫原作のテレビアニメ『ビッグX』(64年)も主人公が巨大化して戦うという内容でした。『ビッグX』の原作コミックではシャープペンシル状の注射器で変身するんですが、『大怪獣モノ』で主人公が注射器を刺されて変身するのは『ビッグX』が元ネタ。注射器で薬物を注入して変身するなんて、ヤバいよね。それで『ビッグX』のテレビアニメはシャープペンシルを持つだけで変身するように変わったんです。そして『ビッグX』の変身アイテムが、『ウルトラマン』のベータカプセルへと受け継がれた。怪獣映画を観て育ったボンクラ少年が大人になってもこうして撮り続けているわけだけど、そういった娯楽作品の歴史は意識してつくっているんです。梶原一騎原作、桑田次郎作画の漫画『ゴッド・アーム』も格闘家が改造手術をうけて超人化するという内容でした。円谷英二、手塚治虫、梶原一騎、桑田次郎……と僕の好きなものをすべて詰め込んだ結晶が『大怪獣モノ』なんです。

──手塚治虫の変身ものといえば、『ふしぎなメルモ』(71~72年)も忘れられません。キャンディーを舐めた女の子が大きくなったり、小さくなったりと、子ども心に観ていて妙な気分になりました。

河崎 手塚治虫の変態ぶりが現われているよね(笑)。

──作家性って、突き詰めていくと変態性だと言えそうですね。

河崎 そうですよ、作家はみんな変態ですよ。三島由紀夫なんて切腹マニアでしたからね。変態性のない作品なんて、逆にいえば退屈なだけです。壇蜜主演で『地球防衛未亡人』(14年)を撮りましたが、これは怪獣を攻撃することで性的興奮を覚える未亡人が主人公で、興行的にも成功しました。モノをつくる上で変態性はとても重要な要素でしょう。

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特典にはメイキングのほか、サンセバスチャン映画祭の映像も

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