ポップで格好良く、ちょっと泣かせるときもある! 昨年2月に死去された韮沢靖氏の追悼画集『BLOOD of NIRA’s CREATURE 韮沢靖追悼画集』レビュー

2017.03.17

『BLOOD of NIRA’s CREATURE 韮沢靖追悼画集』(宝島社)

 昨年2月、52歳という若さで亡くなったキャラクターデザイン・造型師・イラストレーター・マンガ家の韮沢靖氏。その死を悼む追悼画集、『BLOOD of NIRA’s CREATURE 韮沢靖追悼画集』が先月2月9日、宝島社より発行された。

 韮沢氏といえば、特撮が好きな人なら『仮面ライダー剣』(04年)、『仮面ライダーカブト』(06年)、『仮面ライダー電王』(07年)、『仮面ライダーディケイド』(09年)、そして『牙狼 〈GARO〉』シリーズなどのクリーチャーデザイン、映画のファンであれば『ゴジラ FINAL WARS』(04年)や、『妖怪大戦争』(05年)を思い出すかもしれない。

『真・女神転生IV』(13年)をはじめとするゲームでのモンスター・クリーチャーデザインでの活躍や、人気マンガ『PHANTOM CORE』の印象が強い人も多いだろう。多様なシーンで活躍した韮沢氏。それだけに、

「媒体初収録の画稿、超大量!
 収録クリーチャー&キャラクター総数1100体!!
 描かれたドクロの数、およそ1500個!!!」

――と帯にもあるように、『BLOOD of NIRA’s CREATURE 韮沢靖追悼画集』はかなりの大ボリューム(223ページ)。各章それぞれに触れていくと、いくらスペースがあっても足りなくなリそうなので、個人的に気になるところに言及していきながら紹介してみたい。

 まずは、グロくてポップで、エロくて可愛い“クリーチュス”=「ILLUSTRATIONS ofNIRA’s CREATUR“ESS”」たちのコーナー。女性キャラクターと異形のクリーチャーやその他諸々とを融合されたイラストたちなんだが、わずか4Pと全体から見れば割いている紙面は少なめでも、その存在感はデカい。

 韮沢氏のデザインといえばロックっぽいというか、隙あらばという感じであちこちに配されてくるスカルなどを連想する人も多いだろうが、擬人化ともまた違う異形な女性&色っぽい唇&大体大きめに描かれる胸周りも印象的だったので、画集前半のほうに登場してくれてうれしい限り。

 続いて触れたいのが、代表作であるマンガ『PHANTOM CORE』について触れられている。マンガとあって、彩色無し=モノクロのイラストも多いのだが、これがまた格好いい。デザイナー、イラストを本職とする絵描きのマンガというのは、単体のイラストが上手くともマンガとしては残念なことになってしまうケースも多いのだが、『PHANTOM CORE』はちょっと違う。

 アメコミとも、欧州の『バンド・デシネ』とも違うような気もする一方で、描き込みの多さは80~90年代の日本では稀によくあったな、という気もする。もっとマンガを、何なら墨一色だけのイラストをもっと見たかったな、と思えるページになっている。特にヒロイン、ニナ・ドロノはさまざまなコスプレと左腕は、後のクリエーターに多くの影響を与えただろうなと、しみじみ思えるクオリティとオリジナリティ。

TVシリーズ『仮面ライダー電王』に登場したモモタロスをはじめとする怪人「イマジン」たちのデザイン画稿。

 本書ではさらに永井豪&ダイナミックプロキャラクターのリデザイン、そして各『仮面ライダー』、スーパー戦隊『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)のデザイン画なども余すことなく掲載。新作の制作が発表されるたびに、新ライダーのデザインについていろいろな意見が飛び出す『仮面ライダー』シリーズだけども、やっぱり今見ても『仮面ライダー電王』のモモタロスは異彩を放っているし、独特だし、でも格好いい。「俺、参上!」と、今でも何かにつけて叫びだすファンがいるのも納得のデザイン力だ。

 さらにページをめくっていくと、最も多くの作品でデザインワークを担当したという各ゲーム作品のクリーチャーたちも登場。ここは91年の『ビースト・ウォリアーズ』(当時、日本テレネット)から16年よりサービススタートの『ロード オブ ヴァーミリオンRe:3』(スクウェア・エニックス)まで、幅広い年代にまたがったデザイン群が一まとめになっているので、年代ごとの差異、あるいは共通しているポイントが垣間見られるような気になって楽しい。

 特に舞台が荒廃した日本という設定の『魔天伝説~戦慄のオーパーツ~』(99年/タカラ)には、珍しい和モノ――日本の妖怪や風神雷神をモチーフにしたクリーチャーが多く、ちょっと新鮮。

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