【ACTF2017】アニメ制作のデジタル化で制作陣のジェネラリスト化が進む? 作画を撒く前に工程をどこまで詰められるか

■デジタルだと描きすぎて効率が下がる問題 効率の良さを追求する新興スタジオに期待

【ACTF2017】アニメ制作のデジタル化で制作陣のジェネラリスト化が進む? 作画を撒く前に工程をどこまで詰められるかの画像2 写真:未来予測

 入江は今後の課題として、最初からデジタルを使いこなせる若い世代が増えてきていることから、これまで以上にデジタルで制作するということを意識する必要があるとした。それを前提として、紙で培われた技術との混在で、どう座組みを作っていくかと説いた。

 白石は10年後を視野に、個人制作が一般的に行われるであろう時代がやってくることを見据え、現在の職種にプラスアルファで何かできるようになろうと指針を掲げている。消して描き直すのが楽で、なかなか線が確定しないデジタル作画は、個々人の作業効率を落としてしまうが、作画を撒く前の工程に、絵コンテを拡大して原図を作成したり、作画監督がラフ原画を描くなどの工程を挟む事で、全体的な作画期間の短縮が図れたので、今後もデジタル作画の新たなワークフローを模索することで、効率化を図っていくとしている。また力量が分かるスタッフが周りに居ることで、中心になるスタッフが、作画を任せる相手によって任せ方を変えるなど、個々人の能力を勘案した対応も行っている。

 それらを受けて鴨田は、新技術への乗り換えに時間を取られてしまいがちだが、本質を見失わないようにしたいと自戒していた。

 そして山下は、若手を集中させて効率を追求する新興スタジオが業界全体を牽引するのではないかと展望。京都アニメーションがアナログながら独自のラインを作ることで他社が真似できない効率を追求していることから、デジタルで10年以内に、そうした若い勢力が出てくるのではないかと期待した。

 中西は先立って講演した東映アニメーションが開発中のデジタルタイムシートを引き合いに出し、タイムシートが自動化されるならエフェクトだけに集中できるようになると歓迎。反面、制作に参加した、現在公開中のアニメ映画『虐殺器官』でCGソフトの「Houdini」と「3ds Max」も使ったことを取り上げ、撮影では必須の「After Effects」だけでは表現できないエフェクトができるようにならないと置いていかれると肝に銘じた。

 当シンポジウムでは山下が、ミルパンセが『ベルセルク』の作画で行ったような感じで、背景動画の制作でもCGでカメラワークをつけてから作画に撒く話もしていた。熟練したスペシャリストでなくとも、それを作画ガイドとして比肩するものが仕上がる。制作予算が厳しいといった背景もあり、ますます複数の工程を理解したジェネラリストが求められていきそうだ。
(取材・文/真狩祐志)

■アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF)2017

http://www.janica.jp/course/digital/actf2017.html

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