『星空のきみ』ラブコメ萌えマンガと思ったらメンヘラホラー漫画だった!? 壮絶な闇・病みっぷりが凄い

2017.02.26

 コミック配信サイト「サンデーうぇぶり」にて連載中のマンガ『星空のきみ』(作:塚本夢浩/小学館)の第1巻が2月10日に発売された。一見、ただの可愛らしい萌え系ラブコメマンガのようだが、話が進むにつれてどんどん過激に独特になっていき、つい引き込まれてしまうマンガなので、その内容を紹介したい。

 そこそこイケメンだけど、暗い性格のためかブサメンばかりのオタクグループに属している、いわゆるスクールカースト最下層の高校生である主人公・クウト。ヒロインは無口で物静かだけど、他のクラスでも話題になるほどとびきり可愛い・星崎チカ。チカは母親の死後、口数も笑顔も少なくなったという。二人は同じアパートに住んでいる幼馴染で、子供の頃はよく一緒に遊んだ仲だったが、年を重ねるごとに距離が離れていき、今ではすっかり疎遠な感じに。

 クウトは高校生だけど一人で暮らしている。父親が転勤になり母親もそれについていったが、クウトはアパートから離れるのが嫌で残ったからだ。そんなある日、クウトの家へチカが突如訪れる……。

 と、ここまでは読んでいるこちらが不安になるほど、ラブコメにおける超テンプレ的な展開が続く。だが、ここから独特になっていくので続きを。

 クウトの家に無言でズカズカと入ってきたチカは急に“浮く”。そして天井に足をつけて立つのだった。それはまるで、引力がチカだけには逆に働いているよう。

 引力が逆に働くのはチカ本人だけじゃない。チカのお気に入りのモノも引力が逆に働くようで、あれやこれやとしているうちに、チカはクウトの家にモノを持ち込んで、クウトの家の“天井”に住みつくという、奇妙な同居生活が始まるのだった――。

 なかなか物語が良い感じに色を帯びてきたが、これでも、親がいない同士の高校生男女が同居という超テンプレに、“逆引力”という個性的な設定をちょっと追加した程度で、ありがちといえばありがち。だが、この後の展開こそ『星空のきみ』の醍醐味ともいえるものになっている。

 同居生活を始めたクウトとチカだが、チカはそんな状態で学校にいけるはずもなく長期間の学校休みを余儀なくされる。そしてチカが来なくった学校でクウトはある事実に気づく。チカがいないクラスでは、「星崎チカは妊娠しているビッチだ」という悪い噂が蔓延。チカの机に触れることすら「汚い」と言われる始末。そう、実はチカはずっと学校でいじめられていたのだ。表だっていじめられていなかっただけだったようで、チカが不在となったことで、その事実が表面に出始めたのである。

 そしてこのいじめの主犯格と思われる人物が、クウトに密かに想いを寄せている、スクールカースト最上位の美女・ミレイ。ミレイは表向きはすごく良い子で清楚でおしとやかだが、実は超ウルトラメンヘラ女。何年にも渡ってクウトとチカの仲を引き裂く工作を裏で行っていたのだ。

 そんなミレイの相棒は喋って動く謎のぬいぐるみ・前川。前川はミレイの相談に乗ってくれたりサポートをしてくれるミレイの良き理解者。でもミレイの気に食わない発言をしてしまうと「裂けろ!裂けろ!裂けろ!裂けろ!裂けろ!裂けろ!裂けろ!裂けろ!裂けろ!裂けろ!裂けろ!裂けろ!……」とボコボコに蹴られ踏みつけられる。

 ミレイはチカが不登校になったのをいいことにクウトに接近しようと企むのだが、ある日、クウトの部屋を盗聴&盗み見した時に、チカとクウトが同居していることを知る。すると作画崩壊というか、マンガが急にホラータッチになるほどミレイは暴走を始める。ミレイの暴走っぷりはマンガの画風もジャンルも変えてしまうほどの影響力を持っており、それまで「ラブコメ」マンガだった『星空のきみ』が、ミレイの本性が現れてからは「シュールサスペンスホラー」のような仕上がりに。一気に独特度が突き抜けて面白くなった。

 作者の塚本は自身のTwitter(@nb1090)で「個人的には話が進むほど尻上がりに面白くなってくと思ってる」とツイートしている。ちょっと怖くもあるが、この後の展開は実に盛り上がりそうで、これは期待しかない。
(文・白子しろこ)

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