同業他社からもディスられる……「不健全図書」2冊同時指定された謎出版社・ブラスト出版の正体

同業他社からもディスられる……「不健全図書」2冊同時指定された謎出版社・ブラスト出版の正体ブラスト出版公式サイトより。

 毎月、東京都が実施している「不健全図書指定」。いまや多くの人が知ることになった、都職員が買い集めた雑誌・書籍の中から青少年に有害と思われるものを東京都青少年健全育成審議会に諮問し、指定する制度である。指定された雑誌・書籍は18歳未満への販売が禁止され、店頭では18禁を表示するなど区分して陳列することが義務づけられる。

 制度の是非はともかくとして、条例で定められている以上、出版業界ではいかにして自主規制などの手段で指定を回避するか。あるいは、いざ指定された場合には、どんな対応をするかの経験を蓄積している。

 そんな制度の中に登場した新興出版社が、注目を集めている。2月に『桜井遥、女体化しちゃいました。』『俺だけが知ってるアイツの秘密』を同時に指定されたブラスト出版がそれだ。

 この指定に対して、2月21日。ティーアイネットの「コミックMUJIN」編集部、公式アカウントで次のようなツイートが投じられた。

2月の都条例候補のブラスト出版ってどこ? (法人登記がないとのこと)
森嶋こん先生や浅月のりと先生の本 ウエブから紙でだした系か?
都への対応知らなそうでコワイな
――コミックMUJIN編集部公式アカウント(@mujin_tinet)より。


 法人登記がないとは、どういうことか?

 件のブラスト出版の公式サイト(http://blastpub.jp/)を見ると、会社概要に記されているのは、会社名と電話番号のみ。しかも、会社名は単に「ブラスト出版」と記されているだけで、株式会社などの表記はないのである。そこで、電話番号で検索してみると、デジタルコミックレーベル「COMIC維新」を運営し、BL・TL単行本を発行している株式会社彗星社のサイトへと行き着くのである。

 結論からいうと、ブラスト出版の法人登記は存在する。正確には登記から、まだ半月も経っていない。登記簿によれば、今年2月14日に「合同会社ブラスト出版」として会社が成立しているのである。つまり、会社の正式な設立を期して不健全図書指定を喰らうという、なかなか狙ってもできない記念碑を打ち立てたというわけである。

 では、ブラスト出版は彗星社がエロ作品を扱うためのダミーとして立ち上げた出版社なのかといえば、そうではない。両社とも公式サイトの会社概要では関係を秘めているが、どちらも東池袋の同じオフィスに所在する、株式会社ウェイブのダミー会社なのである。

 株式会社ウェイブは、公式サイトでは事業として乙女ゲームのほか「COMIC維新」を運営していることは隠してないが、ブラスト出版の存在については、まったく触れていない。しかし、登記簿を見れば三者共に代表取締役(註:ブラスト出版は合同会社のため代表社員)に、関口航太なる人物の名前が記されている。

 株式会社ウェイブのサイトに記された「主要取引先」を見る限り、ブラスト出版は同社が表には出しづらい事業を行うためのダミーとして設立されたもののようである(ただ、単行本自体には発行者名と住所電話番号も掲載されている。読者にはバレても構わないという判断か?)。

 エロ作品を扱うために、出版社が別の会社をつくる事例は、双葉社におけるエンジェル出版や、少年画報社における大都社、マガジン・マガジンにおけるサン・メディアレップなど、数多く行われていること。しかし、昨年11月の審議会では、委員の一人が指定を受けたロングラインドジェイ有限会社発行の『いいなり少女』を取り上げ「これは(別の出版社である)ジーウォークではないのですか」と指摘している。

 この委員は「逃げ道」という言葉を用いていることから、どうも不健全指定の回数が積み重ねるのを避けるために、同一出版社が複数の会社名を使っているのではないかと見ている様子。つまり、すでにバレバレなのである(ジーウォークの名誉のために触れておくが同社によれば「編プロであるロングラインドジェイにコードを貸したので、こうなっているだけ」とのこと)。

■国家権力への挑戦か? 18禁表示も一切ナシ


 そんな、株式会社ウェイブ=彗星社=ブラスト出版だが、冒頭に記したように同業他社にディスられる明確な理由はある。それが、株式会社ウェイブが運営元として記されている、電子コミック配信サイト「コミックフェスタ(http://comic.iowl.jp/)」の存在だ。このサイトでは、講談社や秋田書店など他社作品と共に、オリジナル作品の販売も行われている。

 問題は、その中のメンズコミック(要はエロ)のカテゴリー。ここでは、無料で白抜きの修整があるエロシーンまで立ち読みすることができる。

 様々な配信サイトでは、修整が必要なレベルの作品のページを閲覧する際に「18禁です」の表示が現れる。あるいは、白抜きページまでは見せない。ここからは、同社が自主規制に対して知識が不足しているのではないかとも感じられる。

 そうした点について、話を聞くべく株式会社ウェイブ宛に取材依頼を送付したものの、期限までに返事はなかった。
(文=昼間たかし)

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