ギャグ大量投入しつつサキュバス女教師と「亜人のいる社会」を掘り下げる!『亜人ちゃんは語りたい』第7話「サキュバスさんはいぶかしげ」レビュー!

『亜人ちゃんは語りたい』第7話TVアニメ『亜人ちゃんは語りたい』公式サイトより

 休み時間。亜人「ヴァンパイア」の生徒・ひかりが生物教師・高橋鉄男に走り寄るなり「校内で不審者を見た」と告げる。だが、彼女の証言を総合すると、どう考えても「熊が校内を徘徊している」という有り得ない状況になってしまう。「完全に熊なんだが……」と対応に困る鉄男。
 
 そんな時、亜人「サキュバス」の女教師・早紀絵は、廊下で見慣れぬ少年がうずくまっているのを発見する。転校生だろうか? 優しく問い質すも回答がいちいち怪しい。名前は「クルツ」。おまけに話の流れで少年に触れるも、サキュバスの催淫が効いていない。ますます怪しい。そこへ鉄男が現れ不審者の件を通達。事態がややこしくなったところで、廊下の角から大男の影が! 不審者は本当にいたのだ。

 一同ビビッたところで、クルツ少年がいきなり大男に延髄切り、からの脇固め! 突然かつ鮮やかな攻撃に一同ビックリ! 凄まじく気合の入ったアクションシーンに視聴者もビックリ!
 呆気に取られる早紀絵だったが、組み敷かれてうめく大男の正体に驚く。彼は若い頃から世話になっていた、通称「亜人課」の刑事・宇垣だったのだ。宇垣を「先輩」と呼んで平謝りするクルツ。つまり彼も刑事らしい。彼らは何故ここに? いぶかる早紀絵に宇垣は事情を説明するのだった……。

 というわけで第7話は早紀絵さんメインの回である。ここ何話かで空回りキャラ、暴走キャラが定着してしまったが、彼女の「無意識に男性を欲情させてしまう」という性質はジェンダー問題にも関わるシリアスなもの。今回はその辺りを掘り下げ、「亜人のいる社会」を考えさせる内容となっている。
 
 早紀絵と2人になった宇垣。彼が学校を訪れた理由は「今年は亜人がたくさんいるから亜人課として見ておかなければ」という、当たり前と言えば当たり前のものだった。クルツ少年は何者か、と問う彼女に、宇垣は「対サキュバス用の決戦兵器」と意味深かつ大袈裟に告げる。

 ここでクルツのイメージカットが挿入されるのだが、これが案の定『新世紀エヴァンゲリオン』のパロディになっていて楽しい(もちろんエヴァが「汎用人型決戦兵器」だから)。第三新東京市を背景に射出台から出てくるクルツすげえ! 再現度はものすごく低いけど一発でそれとわかるエヴァの認知度もやぱpりすげえ!

 近況報告をする中で、早紀絵は自分が恋をしていることを打ち明ける。名前は明かさないが視聴者にはもちろん「相手は鉄男だ」と分かる。「彼は催淫されない」「だから初めて本当の恋愛ができるかも」と宇垣に話す早紀絵。このくだりは第3話「サキュバスさんはいい大人」を参照していただきたいが、鉄男は催淫されないのではなく、「催淫されたのを表に出さないよう理性を保っている」のだ。偉いぞ鉄男。

 話を聞いた宇垣は当然それに気づき指摘。相手は催淫されないのではない。見えないようにしていただけだ。
「高橋先生が私にドキドキしていた?」
 真相を知りカーッと頬を赤らめ取り乱す早紀絵。慌てて言い訳めいた自己分析を早口でまくしたてる。その恥じらいぶりを見ていた宇垣は「サキュバスが催淫されてら」と皮肉交じりに喜ぶのだった。

 このシーン、恥じらう早紀絵さんが本当に可愛らしくてほっこり。一方で宇垣の発言からは「亜人サキュバスの大多数は社会に適応できない」という、作品世界の深刻な問題が垣間見えてピリッとする。だからこそ宇垣は早紀絵が立派に教師を勤め、おまけに恋までしていることがうれしいわけだ。不審者扱いされていた宇垣が、早紀絵を自分の娘のように気にかける優しい男だと分かったところで前半は幕。

 後半。「熊みたいな不審者」についてデュラハンの京子、雪女の雪に全力で説明するひかり。勢い余って背後を歩いていたクルツとぶつかってしまう。ここで「ごめん、さっきー(早紀絵の愛称)……じゃなかった」と、なぜかクルツを早紀絵と間違ってしまうひかり。が、特に理由が語られることなく、亜人生徒たちとクルツはちょっと話してから別行動を取るのだった……ハイ、これ絶対なんかの伏線ですよ! 覚えとこうね! 

 校舎を徘徊するクルツは、男子生徒・佐竹がスマホを覗き込んで興奮しているのを目撃する。佐竹は早紀絵が谷間を露出している姿を盗撮し、大事に保存していたのだ。激怒するクルツはスマホを奪い取り、「ケーッ!」と怪鳥音を発して跳躍。着地するなり佐竹に説教する。サキュバスの先生に興奮するのは健全な高校生として当然のことだ、と無茶な理屈で反論する佐竹。クルツはそんな彼に「サキュバスだからですか?」と問う。亜人の性質にしか興味がないのか、と。

 これまでの回で繰り返し投げかけられた「亜人の性質と人間性」の問題提起。前者「だけ」、あるいは後者「だけ」で亜人と接することの是非。ギャグっぽいやり取りの中で唐突に深刻な議論をぶち込んで来たわけだ。真面目なBGMが流れ、またもやピリッとしたところで、佐竹は「(サキュバスじゃなくても)早紀絵先生はちょっとやらしいなって思う!!!」と校庭に響くほどの絶叫で答える。アホすぎる…だが真っ当だ! 単なる三枚目キャラ、アホキャラだと思われた佐竹が意外にまともだと分かるシーンだ。これにはクルツも「いい答えです」と感心。佐竹にスマホを返してやるのだった。
 
 一方、鉄男は喫煙室で宇垣と亜人、特に早紀絵について話していた。宇垣によると、亜人の社会問題の大半はサキュバス絡みのものだという。たとえばサキュバスが痴漢に遭うケース。サキュバスの性質上「意図的に催淫して痴漢させた」可能性を考慮せねばならず、それを捜査するのが大変だと。

 このくだりは現実の痴漢/痴漢冤罪を想起させる非常にデリケートなものだ。また宇垣の「昔は忙しかった」という発言は「亜人に対して風当たりの強かった時代」があったことを仄めかし、結果「亜人と人間の日常コメディ」である本作の内容自体も重々しく感じられてしまう。この世界観が成立するまで色々大変だった、というわけだ。
 シリアス極まりない会話シーンだが、ここで宇垣の回想に突入しセーラー服&三つ編みの早紀絵が登場。ジャージもいいけどセーラー服もいいね! と若干和む。

 亜人に理解ある教師そして刑事、2人の仲が深まったところで会話終了。宇垣は鉄男に「好かれるようにするより、嫌われないようにしろ」とアドバイスを送る。亜人の少女は人間の少女よりデリケートで、何が理由で嫌われるか分からない、だから気をつけろ、と。

 喫煙室を出たところで鉄男らはひかりとばったり遭遇。いつものように鉄男に話しかけてくる彼女だが、不意にゲンナリし「くさい」と逃げてしまう。煙草の匂いがイヤだったのだ。
 助言をもらった矢先に嫌われてしまい凹む鉄男。宇垣に「けむたがられてしまいました…」と上手い事を言ったところで後半は終了する。

 早紀絵の性質を中心に、亜人についての大真面目な議論が繰り返された今回。とはいえ原作になかったギャグやパロディのおかげで暗い雰囲気は一切ナシ。亜人生徒たちの出番が少なかったのは残念だが、作画のクオリティは元に戻っているので一安心だ。あからさまな伏線もあってますます次回が気になる!
(文/JUP-ON STUDIO)

亜人ちゃんは語りたい 1

亜人ちゃんは語りたい 1

日笠さんの大人っぽい方向の演技がいいですよね

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