『偶像事変 ~鳩に悲鳴は聞こえない~』片足を吹き飛ばされたアイドルが踊り続ける理由とは……

「ヤングマガジンサード」(講談社)にて連載中のマンガ『偶像事変 ~鳩に悲鳴は聞こえない~』(原作:にんじゃむ、マンガ:ミサヲ)の第1巻が今年1月20日に発売された。月並みな言葉だが、同作は予想を裏切る展開、あっと驚く仕掛けがふんだんに詰まった、アイドルものでありながら、本格サスペンスマンガとなっており、シンプルに面白いのでその内容をレビューしてみたい。

 20XX年、日本で地下鉄連続爆発事件が起こり、121名が死亡、858名の負傷者がでた。その翌日には首相官邸付近で爆発物が発見され、一連の事件の容疑者が逮捕されたのだが、驚くべきはその素性。容疑者は日谷一鷹というわずか13歳の少年であった。事件の大きさから日谷は未成年にも関わらず素顔と実名が報道され、彼の死刑を求め300万人もの署名が集まったのだ。

 だが結果的に日谷は死刑にならなかった。物語の舞台では「SRTP」(特別処遇プログラム)という制度が社会に導入されており、この特別な更生処置を行うことで、犯罪者の再犯率は0%になるのだ。日谷ももちろんこれを受けることになった一人。ストーリーは日谷が起こした事件の数年後からスタートし、日谷はすでに刑期を終え一般社会に復帰しているという――。

 ある日、日本一の超スーパーアイドル・柊せらは、ライブ中に何者かによってステージに仕掛けられた爆発物のため、片脚を失う重傷を負ってしまう。そして爆発物を使った犯行ということから犯人を日谷と連想する人も。

 懸命なリハビリの結果、せらはステージに復帰するのだが、その後もライブ中にファンからビール瓶を投げつけられたり、首相からその人気を政治利用されそうになったりと不幸が続く。日本中の何百あるいは何千万というファンたちは“狂信的”にせらを守ろうとし、結果暴徒化してしまうのだが、一体なぜせらがこのように狙われるようになってしまったのか。そこには驚くべきある犯人の狙いがあったのだが、はたしてこの事件にも、日谷は関わっているのだろうか……。

 この物語の見どころは、犯人の正体と目的の推理、アイドルを愛するがゆえに暴走するファンの姿、といったところだろう。もっとも第1巻にして犯人の正体は判明するし、目的もなんとなくわかるので、巻を追うごとに新たな面白ポイントが増えていくのかもしれない。

 アイドルオタクの暴走という着眼点はこの現実世界ともリンクする部分があるので面白い。たとえばジャニーズアイドルのファンは、推してるメンバーの熱愛が発覚すると、推しメンに失望するのではなく、熱愛相手の女性へ憎悪をよく向けている。SNSなどに暴言を浴びせるなどの攻撃をしかけて、アカウント停止に追い込んだりなんかしちゃって……。

 冷静に考えられれば、そんな行為は推しメンを傷つけることにもなるには理解できるはず。推しメンは相手女性のことを好きで付き合っているんだから。それでもファンは暴走を続けアイドルも手を出せない状態に。アイドルもかわいそうだ……。

 と、思ってしまうが、もしこのアイドルが熱愛相手の女性のことを実は憎んでいて、交際スタート後にわざと世間に事実を公表し、ファンにその女性を攻撃させているのだとしたらどうだろうか。自分の手を汚さす相手を葬る、証拠も何もない完全犯罪のでき上がりとならないだろうか?

 同作の世界観は限りなく現実世界と同じで、特別な能力を持った人間なども登場しないので、理解に時間がかからずスラスラと読めて、お話をしっかりと楽しめるのもいい。凝った設定の作品も悪くないが、単純に話運びで魅せてくれるのは最近だと逆に珍しいかも。絵も丁寧で綺麗なので実写映画のようなマンガを読みたい人にはおススメ! ただ、この作品がどれだけ人気が出ても、実写化は“キャストの問題”で無理だろうな~。
(文・白子しろこ)

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