迫力カーチェイスに、“50人斬り”アクション……“血煙”が映える『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五エ門』小池健監督インタビュー!

迫力カーチェイスに、50人斬りアクション……血煙が映える『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五エ門』小池健監督インタビュー!の画像1原作:モンキー・パンチ (C)TMS

 2012年、27年ぶりの新作TVアニメシリーズとして制作・放送された『LUPIN the Third~峰不二子という女~』(日本テレビ系)。モンキー・パンチの原作コミックに漂う、アダルトでハードボイルドな雰囲気を再現したことで、旧来の『ルパン』シリーズのファンからも若いアニメファンからも人気を獲得し、話題となった。

 そのテイストを引き継ぎ、監督を『REDLINE』などで知られる小池健、脚本を新TVシリーズ『ルパン三世』(シリーズ構成・脚本)、TVドラマ『相棒』(脚本)の高橋悠也が務めて制作、劇場で公開された『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』(14年、以下『次元大介の墓標』)。

 次元大介がルパン三世の相棒になるまでのストーリーを、シリアスに格好良く描いた『次元大介の墓標』も好評を博したことで、続けて制作された『Lupin the Third』シリーズ第3弾作品『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五エ門』(以下、『血煙の石川五エ門』)がついに2月4日公開!

 特報や予告動画では、前作をも上回る渋さ、格好良さが見てとれる『血煙の石川五エ門』。その格好良さはどう構築されているのか、そしてどんな見どころが待ち構えているのか。小池健監督を直撃!

■「我々がよく知っている五エ門に成長するまでの、過程の一つを」

―― もともと石川五エ門というキャラクターには、どんな印象を持っていましたか?

小池健(以下、「小池」) これはファンの皆さんと同じかもしれませんが……命を尊んで、無駄な殺生はしない。冷静で運動能力が高く、剣術の腕がすごいというところでしょうか。

―― TVアニメシリーズの初期や原作マンガでは結構お茶目だったり、女性に弱かったりする一面がありますよね。

小池 たしかに原作、それにTVアニメの1stシリーズの初登場回などでの、おごり高ぶっている生意気な感じがあって――自分の剣の腕前に過剰に自信を持っていたその姿が印象に残っていたので、そういう雰囲気を踏襲してみたいという気持ちがありました。そこで、若いころの粋がっている五エ門から、我々がよく知っている五エ門に成長するまでの、過程の一つを描いたエピソードとしてやれれば面白いのかなと。

―― なるほど。ただ、若いころも成長後も、五エ門は口数が多くありません。主人公として描くのには難しいタイプだったのでは?

小池 そうですね。そういうキャラですから、もともと剣術の腕前は高くて、そこからさらに高みに行くためにはどうしたらいいかと考えたときに、やはりメンタル面を拾ってあげるのがいいのではないかな、と。そういった構想をもとに、脚本の高橋(悠也)くんと組み立てていきました。

 彼のメンタル面を拾ったエピソードは過去にもあったと思いますが、今回のように1 時間ビッチリかけて、五エ門の修行シーンや、プライドをへし折られてから這い上がっていく姿を描いたエピソードはなかったと思うので、やりがいがありましたし、上手くお話を組み立てられたかなと思います。

■「いつ敵になるか味方になるのかわからない、緊張感のある関係性に」

―― 前作『次元大介の墓標』は、何だかんだで次元とルパンはパートナーであり相棒なんだなと感じましたが、今回の『血煙の石川五エ門』ではルパンが観察、傍観者のポジションを崩しませんでした。この距離感が面白かったです。

迫力カーチェイスに、50人斬りアクション……血煙が映える『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五エ門』小池健監督インタビュー!の画像2修行中の五エ門を見守るルパンと不二子

小池 『ルパン』シリーズ全体の時間軸からすると、本作はTVアニメの1stシリーズでルパンと五エ門が初めて会った直後ぐらいをイメージしています。あの時は、五エ門はルパンの命を狙っていて、お互いが敵同士だったじゃないですか。今回のお話では仕事が絡んでいないので敵同士ではないけれど、仲間でもないという関係性なんです。

 ルパンはオールマイティなキャラではあるんですけど、スキルが高い人間が好きで、スキルの高い人間を見つけて、仕事の相棒にしていきたいというキャラクターなんだと思うんですよ。ですから仕事によっては敵味方になることはあるんだけど、五エ門に対しても、いずれはできれば仕事を共にする一員にすることができれば、と考えている――そんな距離感を心がけました。

―― 若い五エ門が、我々がよく知る五エ門になっていく過程でもあり、ルパン一味が一味になっていく過程も描かれているわけですね。

小池 そうですね。今回は、五エ門が高みに立つためのお膳だてを、ルパンが知らず知らずのうちにやっているという流れになるように、バランスに注意して物語を組み立てたつもりです。それは次元や不二子との関係性も一緒です。原作やTVアニメ1stシリーズの初期の、いつ敵になるか味方になるのかわからない、という緊張感のある関係性を、このシリーズでは保っていきたいなと考えています。

―― そういったキャラクター同士の関係性でいうと、今作で銭形警部も本格的に登場しましたね。

迫力カーチェイスに、50人斬りアクション……血煙が映える『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五エ門』小池健監督インタビュー!の画像3銭形警部。まだICPOではなく公安にいるらしい

小池 まだ彼はガッツリとルパンを追っているわけではないんですよ。色んな犯罪を追っているうちに、ルパンがいろいろなところで絡んでいることに気づき始めた、という段階です。ルパンを彼が生涯の敵として心定めていく、という過程もいつか描ければとは思いますが……。

 あと、ルパンがあれだけのツールとオールマイティな力を持っているので、銭形のほうもそれと互角か、それ以上という見え方にしないといけない。ですから渋く知的なところも見えるように、と思いながら描きました。

■“「100人斬り”は無理でしたが、50人は斬っています」

―― 若き日のルパンたちを描くということで、『次元大介の墓標』では東西・分裂国家が舞台になっていましたし、今回のゲストキャラも、大きな戦争から帰還した元兵士という時代を感じさせる設定が面白いなと思ったのですが。

小池 そうですね、昭和の中期ぐらいというイメージが伝わるといいなと。またルパンたちがまだ若い、”昔である”という感覚を味わっていただきたいなと。テクノロジーの部分、ビジュアル的にも時代的にあまり突飛にならないように調整しています。

―― 今回は五エ門が主人公で、こういったタイトルだったので、任侠映画みたいだなと思ったんです。この辺は意識された部分ですか?

小池 ……どっちかというと、時代観を掴んでほしいというのが先ですね。武器にしてもドスとか、昔からある銃に武器設定しています。またそういう武器設定にしておくと、鉄竜会にしても幅のあるアクションを見せられるだろうなと。それが結果的に任侠風な雰囲気につながったのかなと思います。任侠風に見せようというのではなく、時代観や相手たちのアクションや立ち位置を考えたら、たまたまそういう位置に落ち着いたという感じです。

迫力カーチェイスに、50人斬りアクション……血煙が映える『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五エ門』小池健監督インタビュー!の画像4次元は、今作でももちろん登場

―― 結果『次元大介の墓標』のガンアクションとはまた全然ベクトルの違うアクションになりましたよね。また、我々は五エ門が人を斬るシーンを意外と観たことがなかったんだなと気づきました。

小池 モノはよく斬っているんですけどね、「つまらぬものを」(笑)。修行を積んで高みに立った彼の、人を斬っていくシーンをどう見せるのか、どう描けばリアリティを出せるのか。かなり慎重に考えまして、相手側=斬られる相手をスパンスパンと斬られていくというアクションに、とくに注力しましたし、苦労した部分でもあります。

―― ラストのアクションは人数もすごいし、すごい迫力でした。アクションを担当される監督という方を立てられたんですか?

小池 いえ、割り振りをして、自分が分量を管理させてもらいました。脚本には“100人斬り”と書いてあって、それは無理だ! と(笑)、少し減らさせてもらいましたけど、それでも50人は斬っています。

 斬られるモブキャラクターに“あ・い・う・え・お……”と番号を振っていって、一応“あ”から“ん”までいったので、鉄流会の面々とあわせて約50人。絵コンテの段階ですでに、どのキャラがどの位置でどれぐらいに斬られるのかを配置していき、その前後のアクションを原画マンさんたちに丁寧に埋めてもらうという形で、まとめました。

―― 人数が多いだけじゃなく、かなりヌルヌルと動いていましたよね。

小池 そうですねぇ、枚数もかなりかかりました……前作と比べても5,000枚ぐらい多くなっています。2.5万から3万枚になっていますので、かなりボリュームを感じてもらえるのではないかと思いますね。

―― ここまでしっかり剣戟アクションをガッツリ見せてくれるアニメは、最近は少なかったのかなと思います。PG12ということで、タイトルどおり血煙もあがっていて、迫力がありました。

迫力カーチェイスに、50人斬りアクション……血煙が映える『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五エ門』小池健監督インタビュー!の画像5血煙をあげて斬り進む五エ門

小池 最初の企画の段階では、「今回はR18でいこう」と話していたぐらいなんですよ。血が吹き出たりすることを、あまり怖がらず見せていこうと。とはいっても、ただ残酷なところを見せたいわけではなく、五エ門の剣術が優れている、斬鉄剣の切れ味がすごいということを強調するための描写です。腕が飛んだりするようなシーンもありますけど、結果的にPG12で収められて良かったです。

■「カーチェイスは前作にもあったし、今回もやりたかった」

迫力カーチェイスに、50人斬りアクション……血煙が映える『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五エ門』小池健監督インタビュー!の画像6珍しく羽織着用の五エ門。手に持つ斬鉄剣も派手め

―― 今作の五エ門は、珍しく羽織を着用していたり、刀のこしらえが派手だったり、物語前半はデザインも普段とは違っていましたね。

小池 先ほどのお話ともつながっていますが、まだ若くて粋がっている五エ門を表現したかったんです。物語の導入部では自分の力を過信しているところがあるので、高価な紋付羽織や豪華な刀のこしらえも、「自分はもらって当然」と思っている――というのを現すためのデザインとなってます。

―― 『次元大介の墓標』に登場したヤエル奥崎は、次元と同じくガンマンだったのに対して、『血煙の五エ門』のゲスト・ライバルキャラはホーク。ライバルキャラが剣豪だったり、剣術使いではないというのが、ちょっと意外でした。

迫力カーチェイスに、50人斬りアクション……血煙が映える『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五エ門』小池健監督インタビュー!の画像7五エ門に襲い掛かるホーク。超タフネスな斧使い

小池 前作のヤエル奥崎が知的で、計画をキッチリと立てて行動するキャラクターだったので、対照的なキャラにしたいと考えて、ホークをパワー系のキャラクターにしました。五エ門が刀なので、飛び道具は使わせず、日常で彼が使っている斧を使わせようと考えました。刀と斧の対比も、よい感じで出たのかなと思います。

―― そのホークがバイクで追ってくるシーンは恐怖感も迫力もありました。小池監督といえば『REDLINE』(10年公開の長編劇場アニメ)を連想するアニメファンも多いと思いますし、『ルパン』シリーズも歴代の各作品で印象的なカーチェイスシーンがありますから、期待しているファンも多いかと。今作でのカーチェイスの見どころは?

小池 そうですね。カーチェイスは前作でもありましたし、当初から今作でも踏襲したいと考えていました。そこで、これまでバイクというのはありそうでなかったので、バイク対車ということにしました。

 ホークのアイテムにバイクを選んだのは、どんなことがあっても傷つかずに追ってくるというキャラクターって怖いよねというのがあったので、某有名映画を多少意識したというか……得体の知れないものが追ってくる怖さの部分、イメージ的なところを参考にさせていただきました。見た目は全然違いますが。

―― 五エ門が主人公のせいか、全体的にシックな感じの影使いで、それが格好いいなと感じたりもしました。画面作りはどんなイメージで構築されたのでしょうか?

小池 それは背景の水イメージが強いんだと思いますね。舞台が日本という設定ですので、墨画っぽい美術も楽しんでいただければと思い、力を注いだ部分です。加えて五エ門自体が、モノクロというか、白と黒のカラーリングでできているキャラクターなので、よりそういった印象が強く残ることになったんでしょうね。

 画面の色あいでいえば、雨が降っているというシーンが印象的になるように、かなり意識して作りました。この作品で、そのシーンが特に印象に残っているとなるとうれしいですね。“血煙”もまた、よく映えると思いますし。

■「まだ描いていないキャラを描きたい、という野望はあります(笑)」

―― 特別先行上映会の舞台挨拶では、小池監督もルパン役の栗田貫一さんも「強くて格好いいルパンを」というお話をされていましたが、監督的には手応えはいかがですか?

小池 そうですねぇ、前作の『次元大介の墓標』とはまた違う見え方になると思うのですが、五エ門のメンタル面、そして高みの境地に達するまでの過程を、ルパンたちがどう見守っているのか。実に渋く、格好いい関係値になっていると思いますので、そこを楽しんでいただけるとうれしいです。

 ただ、これは触れておきたいんですが、「これまでの作品と全然違います」というわけではないんですよ。ルパンはルパン。連綿と続く『ルパン』シリーズの中で、今回は五エ門にスポットを当てたお話ですという姿勢で、スタッフ一同で制作にあたりました。『血煙の石川五エ門』もまたルパンらしい作品になったと思いますので、楽しんでいただきたいです。

―― シリーズといえば、特別先行上映会の壇上で浄園(祐)PDが「この次も……」という野望をお話されていましたが、やはり監督にも「こいつのお話もやってみたいなぁ」という野望がおありだったりしますか?

小池 メインキャラクターで描いていないキャラクターもまだいますから、それを描きたい気持ちはありますし、前作の伏線の回収という構想もあったりなかったりしますから(笑)。もちろん野望はあります。ありますが、全ては今作の反響次第ですので、応援していただけたらうれしいです(笑)。

■『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五エ門』
・17年2月4日(土)新宿バルト9ほかにて<4週間限定>全国公開
・公式サイト:http://goemon-ishikawa.com/

原作:モンキー・パンチ (C)TMS

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