亜人女教師の孤独と苦悩と恋心！『亜人ちゃんは語りたい』第3話「サキュバスさんはいい大人」レビュー！

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TVアニメ『亜人ちゃんは語りたい』公式サイトより

　第3 話は無意識に男性を欲情させてしまう亜人「サキュバス」で、数学教師・早紀絵がメインの物語だ。原作の第6話、第10話、そしてコミック2巻収録（作：ペトス／講談社）の番外編を再構成しながらも、とっ散らかった印象はゼロ。むしろより丁寧に早紀絵の生活や心理を掘り下げた内容となっている。

　24歳独身・早紀絵の朝は早い。暗いうちから田舎（千葉あたり？）のボロ屋を出ると、始発電車に乗って学校に向かい、帰りはいつも終電間際。多忙なわけではない。「道行く男性を欲情させないため」だ。彼女に近付いたり触れたりすると、男性はみんなムラムラしてしまうのだ。亜人サキュバスの性質「催淫」である。いつも野暮ったいジャージ姿なのも、露出を控えるため。男性には決して背を向けないようにしているのも、男性が近寄ってこないようにするためなのだ。

　徹底して男性から距離を置く早紀絵。前半はそんな彼女の孤独な日常が淡々とスケッチされる。田舎の暗い景色、無人駅。ガラガラの電車。見ているとズーンと落ち込んでしまう。背中を見せないようにカニ歩きする様はコミカルに描かれているが、素直には笑えない。唯一の救いは帰宅後のシャワーシーンで、彼女の素晴らしい巨乳が拝める点だ。サキュバスじゃなくても普通にムラムラするぞ！　深夜の宅飲み姿（スルメと缶ビール）は完全にオッサンだけど。
　　
　そんな早紀絵は当然のごとく恋愛経験ゼロ。男性を引き寄せるのは簡単だが、彼らが「自分に好意を持っているのか」それとも「サキュバスの性質に誘引されているのか」区別がつかない。後者であれば、たとえ関係を築けても、それは「ニセモノ」であり本当の恋愛ではない……数学教師らしく（？）理論を構築して、ますます自分を追い込んでしまう早紀絵。が、学校の廊下で転んだ拍子に、鉄男と手が触れてしまう。ムラムラした素振りを一切見せず彼女を心配する鉄男に、早紀絵はグッと来てしまう。「性欲の薄い人となら対等の関係が気付けるのでは」と淡い期待、そして恋心を抱く早紀絵。

　一方、鉄男は早紀絵が視界から消えた途端に赤面。興奮した様子で「サキュバスめっちゃエロいなー」と独白する。「普通に催淫されていたが顔や態度に出ないよう必死だった」と真相が明かされたところで前半は終了。このくだりは早紀絵の孤独な人生がわずかに開けてホッとするうえ、鉄男が良識ある男だと今まで以上に分かって嬉しい。偉いぞ鉄男！　見た目はパッとしないオッサンだけど。
　
　そして後半。生物準備室で語らう鉄男とヴァンパイアのひかり。話の流れで鉄男は「吸血好意と恋愛・性愛の関係」についてひかりを質問責めに。ひかりは平然と構えつつ内心バクバク。実は彼女もまた恋愛経験ゼロで、早熟に見えても相当なウブなのだ。彼女の心理など露知らず、鉄男は「吸血の性的なニュアンスはどの程度なのか」「例えばキス以上とか、セックス未満とか」と問いかける。頭の中に鉄男の「セックス」発言がリフレインし固まってしまうひかり。

　諏訪部順一のセクシーな低音ボイスで「セックスセックスセックスセックスセックス…」と繰り返されるこのシーン、前半の暗さや切なさを一気に吹き飛ばすほどバカバカしくて最高だ。あまりのショックにリアクションが取れなくなるひかりのアホ面も可愛い。
　困り果てたひかりは鉄男の頬に突然キス。「キスの方が簡単かもね！」と強がるも顔は真っ赤っ赤だ。この精一杯大人ぶってる感じ！　たまらん！　第１回から彼女のコロコロ変わる表情は好評だったが、ここで完全に持っていかれた視聴者も多数いたようだ。

　一方の早紀絵は図書館で雑務中、デュラハンの生徒・京子に相談を持ちかけられる。「高橋先生（鉄男）が好きなんです」と打ち明けられた早紀絵は平静を装いつつ、「私も好き！」と心の中で絶叫。「腕のがっちりしたところが魅力的」という京子の意見に「すごくよく分かる！」と全力で同意。
　鉄男と釣り合うようになりたい、大人っぽくなりたいと心情を吐露する京子に、早紀絵はマジメに「大人」について語る。真剣に耳を傾ける京子。なんとか鉄男への好意を気付かれずに済んだ、とホッとする早紀絵。だが「鉄男に自分の髪型について『（オレと）お揃いみたいでいいじゃないか』と言われて嬉しかった」と聞かされ、つい「いいなー…」とボヤき、羨ましさのあまりスネてしまう。

　男性を遠ざけ続けた早紀絵が、ここではごく普通に恋心や嫉妬を抱き、それらを態度に出している。彼女のリアクションはギャグっぽく描かれているが、自然と「ホンモノ」の恋愛感情を抱くようになったと気付かされるシーンだ。素晴らしい。ここでもすわべーのセクシーボイスで「お揃いみたいでいいじゃないかいいじゃないかいいじゃないか」と連呼されるのでファンも大喜びだろう。それにしても鉄男、亜人ちゃんにモテすぎ！　もはやハーレム状態である。

　そんな時、亜人「雪女」の生徒・雪はトイレでクラスメイトが自分の陰口を言っているのを聞いてしまう。ショックを受ける雪。立ち込める暗雲。暗くなる廊下。降り始める雨。
　しばらくして鉄男が廊下を歩いていると、校舎の隅に異様な冷気が立ち込めていることに気付く。その中央にはうずくまる雪の姿が。冷気は雪の身体から出ていた。一体何が？　と鉄男が思ったところで第3話は終了する。

　亜人女性の性質と、それに伴なう苦悩をマジメに丁寧に描きつつ、その変化・成長をコミカルに描いた今回。亜人生徒の可愛らしさも今まで以上に強調されており大満足だが、終盤からホラーさながらに暗いムードになるのが気になりすぎる。果たして次回はどんな展開が……？　
（文／JUP-ON STUDIO）