『タイムスリップオタガール』「年齢拒否」する新世代オタクに読んでほしい? アラサーオタクが中2に逆戻り!

「年齢拒否」する新世代オタクに読んでほしい? アラサーオタクが中2に逆戻り!『タイムスリップオタガール』レビューの画像1『タイムスリップオタガール』(ほるぷ出版/COMICポラリス)

 ここ最近ネットを中心に話題になっている「年齢拒否」の話。とある女性オタク(おそらくそれなりに若い子)がTwitter専用のプロフィールサイトにて、30歳以上のオタクを「その年で痛い」、さらには40歳以上のオタクを「気持ち悪い」と拒絶。“いい年のおばさんオタク気持ち悪い”発言に、ネットは「胸くそ悪い」などと炎上している状態です。

 導入がなんだか物騒になってしまいましたが、マンガ『タイムスリップオタガール』(ほるぷ出版/COMICポラリス)の主人公は、30歳の女性オタクの城之内はとこ。年齢拒否の話で言うと、“その年で痛い”オタクです。

 はとこは、地方から夜行バスで遠征して、コミケやテニミュっぽいミュージカルを見にいくほどのガチオタク。彼女と近い年齢の筆者からすると、30歳なのにエネルギーいっぱいで羨ましい……と感じるほど。

 コミケで同人誌を大量に買い込み、意気揚々と帰路に着こうとするはとこですが、突如トラブルが訪れます。なんと、国際展示場駅のホームから転落。電車に轢かれる――しかし、はとこの頭は、遺品整理で押入れにある同人誌や学生時代に出した二次創作ホモのコピー本といった“黒歴史”が見られてしまう恐怖感でいっぱい。

 とりあえず手にある同人誌が散乱すると公共の場で迷惑がかかると、身を挺して守るはとこ。死んだ、と思って目を覚ますと、なんとコミケの前日に見に行ったミュージカルの会場だったのです。

その後も“高いところから落ちて、死にかける”という局面で数日前にタイムスリップするはとこ。高いところから落ちないよう気をつけていたのですが、トラックにはねられ、空から転落。目を覚ますと1996年。はとこは中学2年生に逆戻りしてしまったのでした。

 1996年ということで、作品には「無記名小為替」での同人誌購入方法や、同人誌紹介雑誌(作品では「ずにあ」となっていましたが、おそらく「コミックボックスJr.」のこと)が登場したり、はとこの部屋に「グラデーション便箋」があったり……次々登場する失われたオタク文化に“その世代のオタク”爆死必至。作者の佐々木陽子さんの年齢は不明ですが、おそらくこの世代からのオタクなんだろうな……。

 この作品は“身体は中2、心は30歳”のはとこが、これまでの人生経験と培われたオタク知識を生かしてまた新たな人生を歩むという物語。未来から持ってこられた「画力」、そして30歳になるまで「17年もある」ことで、マンガ家の夢を抱くはとこ。「イケメン男子が出てくるマンガが描きたい!」と胸踊らせます。「『男性声優さんたちが女子キャラに声あてるアニメ』が見たいな~~」と、なかなかな妄想をしていただけに、期待大です。

 この作品を読むと、かつてはオタク文化が今ほど周囲から受け入れられることではなかったこと、そしてTwitterもpixivもないだけに、供給も少ないこと、しかしその中でオタクを楽しんでいたことを思い出します。

“その年で痛いし気持ち悪い”と思うのはその人の意見であるし、おばさんを敬えというわけでもありませんが、その“痛いし気持ち悪い”世代のオタクがいたからこそ、今のオタク文化の盛り上がりもあるのかもしれないなと、このマンガを読んで少しばかり思ってくれるといいなと、おばさんオタクは思うのでした。
(文・月島カゴメ)

タイムスリップオタガール 1

タイムスリップオタガール 1

痛いのはわかってるんだよ?

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