『ヲタクに恋は難しい』“非ヲタ”も思わず共感!? “カップルあるある”が満載のラブコメディ

2017.01.21

 近頃ではpixiv発のマンガも増えてきているが、中でも今回紹介する『ヲタクに恋は難しい』(作:ふじた/一迅社)はピカイチだと思う。「次にくるマンガ大賞2014」の“本にして欲しいWebマンガ”第1位となり、書籍化されれば瞬く間に売上50万部を突破。2015、2016年には「このマンガがすごい!」オンナ編で堂々の第1位に輝いた。そして先日発売された第3巻では、累計300万部(電子書籍を含む)を突破している。しかしこれは単純に「タイトルに惹かれて」とか「絵が可愛いから」という理由だけではなく、ガチヲタはもちろん、非ヲタから見ても面白いからに違いない。

 ルックスはなかなか良い主人公のOL・成海は、転職先で幼なじみの宏崇と再会……となると、甘酸っぱいラブストーリー的な展開を予測してしまう人がほとんどではないだろうか? しかし、そう簡単にはいかないのだ。というのも、この成海は、実は隠れ“腐女子”。一方、宏崇も長身眼鏡のイケメンなのに、隠しもしない重度の“ゲームヲタク”という残念男子なのだ。新しい会社でヲタバレしたくない成海は、ひとまず宏崇を誘って飲みに行くが、この二人が恋人同士に発展する経緯が実に愛らしく面白いので、あえてここでは明記しないことにする。成海はこれまで何人かの男性と付き合ったことはあるが、すべてヲタクを隠していたため、破局の原因は大方がヲタバレ。今回宏崇と付き合うことになって、晴れてヲタクを隠さなくて済むようになるのだが……?

 さて、ここでもうひとカップルの紹介もしておきたい。成海の先輩で親友の花子(花ちゃん)と、宏崇の先輩でもある樺倉である。花ちゃんは実は、超大手で大人気の男装専門コスプレイヤー。普段は眼鏡で巨乳の「ザ・デキる先輩!」なのだが、いざコスってしまうと男女問わず惚れるほどのクオリティだ。その花ちゃんと、「喧嘩するほど仲がいい」を地で行く彼氏・樺倉先輩は、この4人の中ではライトな方の、普通にちょっとエッチな美少女系が好きなアニヲタ。一見イカツイし、花ちゃんとは喧嘩ばかりしているので怖い人に見られがちだが、実は花ちゃんにだけはツンデレなカワイイ野郎である。

 そんな多方面なヲタクが編み出す会話はカオスだが、あるあるネタも多いので、共感できる部分が多いのが本作の魅力。思わず「うんうん」と首を縦に振ってしまいたくなる“カップルあるある”も随所に散りばめられているので、非ヲタでも十分楽しめるはずだ。初めは、ヲタク同士で付き合うなんてキモいと言っていた成海だったが、宏崇と一緒だと素の自分を隠さずにいられる心地良さに慣れていく。しかし! もっと普通のデートがしたい! ……ということで、ヲタク用語の使用や行為を禁止して行う「ヲタク封印縛りデート」を断行することに。ルールを破ると罰金を課されるという、一見ソフトな罰ゲームだが、ガチヲタな二人にはなかなか厳しいようだ。そこでは花ちゃん&樺倉先輩カップルが(というか、主に花ちゃんが)一肌脱いでくれるシーンもあってほっこりする。

 タイトル通りに、ヲタクには恋のハードルは高いと思われがちだが、「それならヲタク同士で付き合っちゃえばいいじゃない!」というのがこの『ヲタクに恋は難しい』というマンガ。登場人物は他方位に向いたヲタクだし、成海と花ちゃんは同じ腐女子で好きなカップリングまでかぶるのに、受けと攻めだけがどうしても相容れない不思議な関係。キモヲタばかりがクローズアップされがちな世の中、こんなに可愛らしく初々しい恋をするヲタクもいるのだ(きっと……)。そう、ヲタクだって恋をするのである。たとえ難しくとも!!
(文・桜木尚矢)

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