総じてシリアスなパートと下ネタを含むギャグ・パートのバランスの悪さを、過剰な映像表現をもって、これでもかとしつこく見せられるウンザリ感に浸ってしまうのだが、次第にそれゆえの奇妙な魅力がもたらされていくように感じられるのは、これもまた甘美な悪夢的体験にこちらがいつのまにか引き込まれているからだろうか。
結局のところ、もっと上手いやり方はなかったのか? いっそTVアニメで他の<物語>シリーズと同じような装いでやったほうが気持ちよかったのではないか? などなど、いろいろ文句を言いたくもなってくるところもあるのだが、一方でこの世界観にどこかしらはまってしまっている自分もいたりするので、本当に居心地が悪い。
この居心地の悪さこそを新房&尾石コンビが狙っていたのだとしたら、こちらの完敗である。
とはいえ、特に新房作品ということでは彼の悪夢的技巧表現は本作に限らずパターン化してきている懸念も感じないではない。
それはテレビから映画にと発展していった『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズが、愛らしいキャラと不穏な世界観、そして悪夢的演出の数々のギャップによって魅力が引き立てられていたのに対し、今回はそのギャップがどこかしら欠けていたのかもしれない。
その意味でも、新房が総監督を務める今夏公開予定の『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(監督は武内宣之)なる東宝メジャー進出作品が、また別のギャップから魅力をもたらし、彼にとっての新たな転機となることを、今から期待したいところである。
(文・増當竜也)
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