このモブおじさんは“モブ”なのか!? 『モブおじさんはボーイズラブの主人公にはなれない』レビュー

 昨年のクリスマスイブに“モブおじさん”がテーマのBLアンソロジーが発売されました。その名も『モブおじさんはボーイズラブの主人公にはなれない』(ふゅーじょんぷろだくと)。“いかにも”ふゅーじょんぷろだくとが出しそうな感あふれる一冊です。

 BL界におけるモブおじさんとは、モブであるのを良いことに腐女子が犯してほしい男(受け)をメッチャクチャしてくれる存在。大概コ汚~く描写されています。腐女子によって多少解釈は違うかもしれませんが、筆者はこのように認知しています。また、その世界において攻めを超える攻めがいない場合、それを犯してくれる存在として重宝されているのかなと。

 汎用性の高さから、腐女子に絶大な支持を得るモブおじさんですが、所詮はモブ。主人公はおろか、メインキャラにもなれません。しかし、彼にフォーカスを当てたのが本書。

 となると、モブおじさんは“モブ”ではなくなるのでは……と思ってしまうのですが、考え込むと精神と時の部屋に行ってしまいそうなので、とりあえず読み進めてみます。

 8作の短編は共通して、モブおじさん目線でストーリーが進みます。この時点で「このおっさんは、モブおじさん……なのか?」と疑問符が若干浮かびますが、こういうモブおじさん解釈もあるのかなと、少し見地を広げられた気分に。帯にある“いつか、愛されてみたかった。”という言葉のとおり、なかなか報われないモブおじさんたちのBLが繰り広げられていきます。

 ただ、カワイコちゃんが汚~いモブおじさんに犯されまくっているのを見たい腐女子向きではないのは、正直残念なところ! 林の茂みやビルの間で拒絶しながら汚いモブおじさんに犯されているカワイコちゃんが見たかったんじゃ~~~!

 少し肩透かしを食らった気分になりましたが、個人的にその中でなかなか良かったのはシノキ垰の「とげのないバラ」。かわいい男子高校生に誘惑され、公衆トイレでイチャイチャできてテンション上がるモブおじさんでしたが、実はその高校生は美人局。突如その高校生の彼氏(?)に殴られ、2人のセックスを朦朧とする意識の中で見つめるモブおじさんはいい“モブ”していたな~~と。

 でも、やっぱり筆者は犯しまくるモブおじさんが見たいので、次は『モブおじさんはカワイコちゃんが犯したくてたまらない』アンソロを期待したいところです。
(文・月島カゴメ)

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