いや~、やっぱり、コミケの本領発揮は3日目である。多くの男性たちが目の色を変えて、大みそかから正月を幸せに暮らすために「オカズ」を仕入れる日である。
いや、もちろんそれだけではない。尖った情報を知らしめてくれるオンリーワンな同人誌が集う評論ジャンルだってあるのだ。
というわけで、休憩スペースに荷物だけを置いて場所取りしているマナーの悪いヤツらを横目に見つつ突入した3日目。まず、やってきたのは真のパロディ作家といえる唯一無二の存在、エル・ボンデージ氏のスペース。いつも、藤子キャラが縛られて酷い目に遭っていたりする「大丈夫か?」と思う氏の新刊は、エロ劇画の巨匠であるダーティ・松本氏と合同の望月三起也先生追悼本。
ダーティ氏は、全盛期の勢いで追悼作品を描いているのだが、一方のエルボン氏はというと……やっぱり『ワイルド7』(少年画報社)のユキが縛られているではないか。でも「最初に読んだときから、ユキが敵に捕まっているシーンに興奮してたんです!」と熱く語るエルボン氏の表情には、一点の曇りもなかった。
だが、今回の同人誌は辛いものだったと、エルボン氏はいう。
様々なキャラクターのパロディを描くことに加えて、背景の木目をすべて手書きすることで知られるエルボン氏。そんな氏は、今回、望月タッチで戦車を描くことに挑戦している。
「すべて、望月タッチにしようと思ったんですが、思った以上に時間がかかって大変なので、一部は諦めました……構図といいタッチといい、改めて望月先生の素晴らしさがわかりました」
そう熱く語るエルボン氏であるが、スペースに貼っている手書きのポスターに、そこはかとないアブなさあったのが、印象的であった。
さて、3日目に目撃したインパクトの強いものとして取り上げたいのは、谷口さん氏のスペースで売り子をしていた『艦これ』の天津風の着ぐるみの人である。
谷口さん氏は、本サイトでも取り上げられているTSF作品のスペシャリスト。中でも本領を発揮しているのが、着ぐるみ(皮)によるTSである。要は、着ぐるみみたいなのを着たら、身体まで女の子、さらにはキャラクターそのものになってしまうという、一種ぶっ飛んだ展開である。
同人誌で、そんな作品を描き続ける谷口さん氏は、夏コミを除けば、常に着ぐるみの売り子さんを配置し続けている。その結果(筆者も含め)多くの人が、脳内で作品と現実とのシンクロを巻き起こし、着ぐるみ自体に興奮を覚えるような条件付けをされてしまっているのだ。なんとも高度な布教、いや洗脳……世の中には着ぐるみのパンツを必死に撮影するローアングラーというものもいたけど、今では存在理由が、よくわかる!
評論スペースに足を向け、発見したのはマニアックな作品を追い求める、かに三匹氏の新刊『宗教とアニメーション』を発見。創価学会や幸福の科学、親鸞会など宗教団体が布教のために制作したアニメーションを、けっしてネタではなく、真面目に解説するというオンリーワンの一冊である。
そんな評論スペースには、オタク議員として知られる、大田区のおぎの稔区議も出展し、多くの参加者が足を止めていた。
参加者ひとりひとりが、必死で明日への糧となる一冊を追い求めた冬コミ。そこで得た幸せを元にして2017年を良い年にしたいものだ。
(文=昼間たかし)
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